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ここで、t0.7は0.7rでの翼厚である。この式はトルクが尺度の3乗に比例することを表している。圧縮破壊の場合、氷片の破壊によって生じるトルクのFice成分は氷片の強度に比例し、尺度の3乗に比例すると考えられる。

ここで、この式に実験値を当てはめてみる。大直径プロペラでの値σc=600kPa、h=0.03m、t0.7=0.00531m、R0.7=0.0931mを代入するとQI=8.9Nmとなる。実験から分離したこのときのFiceのトルク成分の値は、プロペラ回転数を8rpsとするとQI=11Nmとなり、両者は比較的良い一致を示す。式にプロペラ回転数が含まれず、圧縮破壊は低回転数のみで起きることから、この式の適用範囲は限られるが、今回の実験への適応は妥当であることが認められる。

 

5.2 Finertia1成分に関する考察

今回の模型実験では、翼との衝突により氷片が破壊した場合のみを解析したが、氷片が破壊しない場合でも接触によりFinertia1成分は生じる。ノズルプロペラのように氷片の大きさが制限される場合のトルクではFice成分より大きくなり、Finertia1成分がメインの成分ともなりうる。

そこで衝突によるFinertia1成分の尺度影響を考えてみた。翼と氷片の衝突をバネ系の衝突と考え、次の仮定をおく。氷片は質量mの質点と考え、衝突による局部変形はなく、非弾性衝突により運動量がすべてバネ変形に使われる。翼は剛であるボスに取り付けられた質量M、バネ定数kのバネである。氷の破壊による力をF、バネの変位をxとすると、以下の式が成立する。

(M+m)x"+kx=F(t) (8)

ここで、ω=[k/(M+m)]1/2とすると、次式が成立する。

Fmax = [k/(M+m)]1/2mv = ωmv (9)

実船と模型の縮尺をλ=Ds/Dm(サフィックスDs:実船、Dm模型)とすると、氷片の質量mについては、以下の式が成立する。

Ms/Mm = ms/mm3

vs/vm = πnsDs / πnmDm=nsDs/ nmλ

ks/km = Es/Emλ (10)

弾性率Eが実船と模型で変わらないと仮定すれば、Es=Emとなる。従って、歪みε、力F、トルクQについては、それぞれ以下のように表される。

εsm = λ(ns/nm)(Es/Em)1/2=λ(ns/nm) (11)

Fs/Fm = λ3(ns/nm)(Es/Em)1/23(ns/nm) (12)

Qs/Qm = λ4(ns/nm)(Es/Em)1/24(ns/nm) (13)

この仮定ではスラストは尺度の3乗、トルクは尺度の4乗に比例することになる。大小模型プロペラ同士の比較では、スラストはプロペラ直径の約3〜4乗、トルクは約4〜5乗に比例しており、実験結果と傾向が一致する。

 

 

 

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