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5 考察

 

本アンケートでは自主分離通航方式をどのように認識しているかについて意識調査を行うため、大型船舶に限らず内航船舶、外国船舶、旅客船、漁船など様々な船舶に対しアンケートを配布した。その結果、3割近い回収率を得ることができ、また、各関係団体の協力もあり外航船から内航船まで広く意見を収集することができた。以下に本アンケート調査によって得られた結果について考察する。

(1) 認知度に関する調査では、外航船舶では回答者のほとんどすべてにおいて知られていることが確認され、内航船舶においても8割近い回答者が自主分離通航方式に関する知識のあることがわかり、船種を問わず広い範囲で高い認知度が得られていることが確認された。

(2) また、海図への記入状況では、外航船舶では回答者のほとんどすべてが記入しており、内航船舶においても利用海域のみの記入を含めれば9割近い海図への記入が確認された。すなわち、分離通航方式を自主的に設定してから今日に至るまでの長期にわたる積極的な情報提供と利用者による慣習的な利用が自主分離通航方式の慣熟性を高めているものと推察される。

(3) ただし、自主分離通航方式の利用状況については、各海域おいて差がみられ剣埼、州崎、日ノ御崎沖では非常に高い利用状況が確認されたが、その他の海域についての利用状況は半数以下の結果となった。しかし、必要性に関するアンケートでは全体の約7割近い回答者がその必要性を認めている結果もあり、近年の船舶の大型化や高速化、船種の多様化などにより設定当時の船舶航行経路と実情の航行経路が相違してきていることが考えられる。

(4) とくに潮岬沖の自主分離通航方式に関しては、設定位置に関して陸へ近すぎるという回答も多く、自由意見では沖側に移動するとともに、沿岸通航帯の考え方を導入した大型・小型船の住み分けを求める意見も多く見られた。

(5) 自由意見においてとくに多く見られたものは、法制化を求める内容や周知徹底を求める内容のものであり、また、海図への記載を求める意見もいくつか見られた。その他に海図に貼ることが可能なカバーシート作成案を提供した意見もあった。

以上のように自主分離通航方式が広い範囲にわたって認知されていることが確認され、その必要性も認められていることが確認された。しかしながら、一方で現状の設定海域や位置が近年の船舶経路の実情に適していない設定水域があることも確認され、当該海域における船舶交通の実情を調査する必要性が望まれる。

また、多種船舶による自主分離通航方式の慣習的な利用により、その慣熟度を高めるための方法論として大小船舶の航行水域の住み分けの必要性も自由意見として指摘され、沿岸通航帯の考え方を導入した自主分離通航方式の設定も考えられるひとつの方法である。

しかしながら、それらの条件を達成するためには、国内外を問わず利用するすべての船舶が認識する必要があり、自主的に設定している現段階においては困難さを残す。

 

 

 

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