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新方式レーダによる船舶の追尾結果と従来方式のレーダーによる一般船の追尾結果との対応を図3.5.2.1〜図3.5.5.2について要約するとつぎのとおりとなる。

(1) 図3.5.2.1は、双方のアンテナから得られる映像に(エコーの大きさ)差が有る場合に、従来のレーダー方式でそれらの映像が各々6秒周期で得られた場合の追尾結果例を示した図である。図3.5.2.2はそれら同じ速力(10から15ノット)の追尾結果の航跡と新方式レーダーでそれらの映像が3秒周期で交互に得られた場合にはその速力は2倍(約20から30ノット)となった追尾結果の航跡がほぼ一致していることを示した図である(航跡が同じで周期が半分になった場合にはその速力では2倍となっている)。図3.5.2.1から図3.5.2.2に示した追尾結果例から「一般船舶(35ノット以下)の追尾性能が劣化しない。」ことが分かる。

 

(2) 図3.5.2.3と図3.5.2.4は、船舶の速力が35ノット以上となっているほか前の図3.5.2.1と図3.5.2.2の説明と同様である。図3.5.2.3から図3.5.2.4に示した追尾結果から、「当初設定した航海速力が約35ノットまでの一般船舶の約2倍となる高速船は問題無く追尾可能である。」ことが分かる。

 

(3) 図3.5.3は、収集データの中に約50ノットの高速船の追尾速力に対応する約25ノットの一般船舶の追尾速力がなかったため、従来のレーダー方式による追尾速力と新方式レーダーによる追尾速力との相関を示した図である。図3.5.3に示したとおり、「新方式レーダーによる追尾可能な船舶の最高速力は従来レーダーによる追尾可能な船舶の最高速力の2倍となる(追尾性能向上)。」ことが期待できる。

 

(4) これら追尾結果例におけるスレッショルドレベルとエコーの大きさとの相関関係については図3.5.4.1〜図3.5.4.4に示した。実際にシステムの通常運用で自動制御していたスレッショルドレベルの範囲内で(監視対象船舶の)エコーの大きさ差に伴う位置変動も若干認められたがエコー入力がある限り高速船の追尾にも問題がないことが分かった。

 

(5) 図3.5.5は、位置の相関が有る場合に追尾することを説明する図である。

図3.5.5に示したとおり、「新方式レーダーによる理論上の追尾性能向上」が期待できる。

 

(6) 図3.5.5.1〜図3.5.5.2および表3.5.5.1〜表3.5.5.2に新方式レーダーでは位置確率(注1)が向上することを示したが、航海速力約35ノットまでの一般船舶の追尾で、新方式レーダーでは既存レーダー方式よりも早く安定することなどが期待できる。

なお、(実際上の)追尾性能向上には従来技術のレーダーで問題点となっていた船舶映像の入力が出来ないまたはその他の船舶や船舶以外の映像でシークラッタ(航跡波含む)などを追尾する、いわゆる追尾でロストおよびシークラッタなどへの乗り移りには新方式レーダーによる追尾処理の改良または追尾パラメータの変更など今後の対策も必要である。

 

(注1) 位置確率については参考資料6参照

 

 

 

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