日本財団 図書館


3.5 新方式レーダーの考察

3.5.1 3つの条件下における考察

表3.4.5.9にまとめたように、新方式レーダーによる高速船の追尾結果を、従来方式のレーダーによる一般船舶の追尾結果(位置、航跡、速力など)を基準として、以下の3つの条件において考察する。アンテナ1回転の間における追尾物標の移動距離を固定するとアンテナ1回転の時間と追尾物標の速力は反比例の関係となり、時間を半分にすると追尾可能な船舶の速力は従来方式の2倍となる。新方式レーダーによる追尾可能となる船舶の最高速力については図3.5.3に示した。

 

(1) 高速船の追尾が可能で、理想的な運用条件下における考察(前述の条件1]に同じ)

双方のアンテナ系に対するスレッショルド制御が安定して(両アンテナからの快像に差が無い)通常の運用状態では、新方式レーダーによる高速船(追尾可能な船舶の最高速力は約70ノット)の追尾結果は従来方式のレーダーによる一般船(追尾可能な船舶の最高速力は約35ノット)の追尾結果と対応(位置と航跡は一致、追尾可能な船舶の最高速力は従来方式の2倍)した。

位置と航跡が一致することは表3.4.5.1と表3.4.5.4の対比を参照。図の右半分にプロットした位置が一致していることに注目、右半分の航跡は一致する)

 

(2) 高速船の追尾が可能で、現実的な運用条件下における考察(前述の条件2]に同じ)

双方のアンテナ系に対するスレッショルド制御が不安定で、(両アンテナからの映像に差が有る)普通の運用状態では、新方式レーダーによる高速船(追尾可能な船舶の最高速力は約70ノット)の追尾結果は従来方式のレーダーによる一般船(追尾可能な船舶の最高速力は約35ノット)の追尾結果と大差なく、位置変動は若干認められるがほぼ対応(位置と船舶はほぼ一致、追尾可能な船舶の最高速力は従来方式のほぼ2倍)した。位置と航跡がほぼ一致することは表3.4.5.2と表3.4.5.4の対比を参照(図の右半分にプロットした位置がほぼ一致してることに注目)。

 

(3) 高速船の追尾が不可能となる運用条件下における考察(前述の条件3]に同じ)

アンテナ片系の障害時などにおいては、新方式レーダーであっても高速船(約35ノット以上)の追尾は不可能であり、従来方式のレーダーによる一般船(約35ノット以下)の追尾結果(位置、航跡、追尾可能な船舶の最高速力)と同じになった。

 

以上の3つの条件を総合考察すると、新方式レーダーの位置合わせを定期的に実施するほか、新方式レーダーの運用中において監視対象船舶の安定した追尾結果を得るためには背中合わせのレーダーアンテナから交互に得られる船舶の映像に差が生じた場合にその位置または大きさなどが一致するよう手動または自動で各々のアンテナ別にスレッショルドレベルを個別制御および相互に連携制御して、船舶の位置変動およびまたは速度変動を極力少なくすればよい。アンテナ別に船舶追尾を可能としておく必要が有る。約35ノットまでの一般船舶の追尾では従来方式より安定して追尾することが期待できることになる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION