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3.2 シミュレーションの可能性の調査

新方式レーダーシステムの効果を調査するに当たって、実際に新方式レーダー機器を試作するには時間、経費が掛かり過ぎることから、現行のレーダー映像でシミュレーションが可能かどうかを検討した。

現在の我が国周辺の高速船の運航状況については、昨年度調査を行ったが、その結果、昨年度の報告書第2章に記載したとおり、当面は50ノットまで追尾可能であればよいという結論に達した。この数値は現在運航されている一般の高速船の速力の2倍以下である。従って、回転数を同一とした背中合わせの2面のアンテナを採用すれば、アンテナ回転数を2倍にしたと同じ効果が得られることが、シミュレーションによって検証できればよい。

 

(1) まず、シミュレーションのための画像処理であるが、毎分10回転のアンテナで6秒ごとに収集した一般船の画像データを、毎分20回転のアンテナで3秒ごとに収集した高速船の画像データと等価とみなすことができるかについて考察する。

これは、アンテナ1回転による映像を1つの画面として、これを6秒ごとに切り替えて表示した場合と3秒ごとに切り替えて表示した場合との違いについて考える。画面上で第1画面の船舶の位置と第2画面の船舶の位置の違いは、画面切り換えの時間差による移動距離を示しているから、その位置が6秒後の位置なのか3秒後の位置なのかによって、船舶の移動速度に倍の違いがあることになる。

この場合、アンテナ1回転中、つまり6秒間の走査線の数(パルス繰り返し数)は一定であるから、これを3秒間で1回転したものとみなすと毎秒の走査線の数が倍増したのと等価になる。これは物標の検出能力を低下させずにアンテナ回転数を倍にしたのと等価であることを意味している。つまり、この方法によって、2面のアンテナで従来通りの性能のレーダー2台を運用した場合のシミュレーションが可能である。

 

(2) 船舶映像の追尾は、前回のアンテナ回転で得られた船舶の位置と今回のアンテナ回転で得られた位置との相関関係によって、同一の船舶の映像であると判断されるときに成立する。この判定基準は追尾パラメータ(定数)の1つとなっており、位置の差がこの値以下であれば追尾できることになるが、6秒ごとの映像で追尾できるのであれば、映像を3秒ごとの映像だと考えるのは経過時間を半分と考えることであるから、速度が倍になったと判断するだけで、追尾には影響がない。

しかし、前記第2章で説明したように、実際には2つのレーダーの映像には若干の差異があると考えられるので、この映像を交互に取り出して処理すると、同一の船舶と判断できない事態が生ずる恐れはある。そこでこの状態をシミュレートするために、映像データの量子化のスレッショルド値を2つ設けて、この値で3秒ごとの画面の映像の量子化を交互に行い、これにより追尾処理を行う。例えば、3秒後の画像での追尾ができなくとも、6秒後の画像との間で追尾できることも確認する。

 

 

 

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