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これら固定スパンと浮体スパンの間には橋梁の伸縮、角折れなどを吸収する緩衝スパンが設置されている。ワシントン湖の水位変動はカスケード山脈からの雪解け水によるもので約2ftあるが、緩衝スパンの可動側(浮体橋側)の道路伸縮装置はこの水位変動よる浮体スパンの鉛直変位に加えて、橋軸および橋軸直角方向の伸縮量がそれぞれ+-1.5ft、+-1.0ftもあるため、ドイツで開発されたスイベルジョイントが使用されている。

浮体橋の係留にはケーブルアンカー方式が採用されており、湖底のアンカーは次のように水深、地質により使い分けされている。

・湖底の地質が軟弱な場合はコンクリート製の錨型アンカーを埋設

・水深が浅く湖底が硬質の場合はH型鋼杭式

・水深が深く湖底が硬質の場合はコンクリートスラブあるいはボックス製の重力式

浮体ポンツーンヘのケーブル定着部は、先の水位変動に対する張力調整用のジャッキ引き込み装置が設置されており、その最大張力は60t。なおワシントン湖は淡水のためアンカーケーブルの腐食の問題は少なく、電気防食されたケーブル(60mmφ)は15年程度で交換するとのこと。

これに対してフッドカナル橋は海上橋のため潮位変動が約5m(17ft)もあり、また海水であるためアンカーケーブルなどは本橋の3倍の強度を必要とした。

次にMercer Island側の橋の下には、ワシントン湖の3つの浮体橋を維持管理するための基地が設けられており、管理事務所や作業船発着設備などが完備。これらの日常の維持管理要員は3名とのこと。

1) ポンツーンは隔壁で多数のセルに仕切られているが、ポンツーン内には万が一の浸水に備えて浸水をポンプアウトするパイプが巡らされており、維持管理基地には排水ポンプも2セット常備している。

2) 浸水のモニタリングシステムも完備しており、浸水センサーがポンツーン内部への浸水を検知すると管理事務所のモニターが起動し3橋のうちの浸水発生ポンツーンを知らせる。そこで職員が出動し、ポンツーン上に設置したモニターで浸水がポンツーンのどのセルに発生したかが判る仕組みになっている。

3) 浸水検出のセンサーには当初高価な電気信号部品を使っていたが、ゴミなどの付着にも敏感に反応し実用的でないので、フロート式の廉価な低故障品に今後取り替えるとのこと。

4) 橋面上の雨水や、自動車事故により橋面に流れたオイルは配水管で橋梁中央部まで横引し、そこに設置された回収タンクに集められ作業船で回収する。

5) わずか3人で3橋の維持管理をするため、マンホールの開閉など細かいところにも作業性を考えた細かい工夫が見られた。

今回案内して頂いたCharles Evannsは橋梁の専門技術者であるが、彼によればワシントン州運輸局には橋梁技術者が50〜60人、点検マンなど含めれば約100名おり、米国一の技術水準を誇る。Melanie Moores嬢も大学の情報分野の出身だが、もともと橋梁が好きで橋梁にも関係の深い現在の運輸局広報官の仕事を選んだとのこと。

 

 

 

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