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国連海洋法条約は、約7年前に署名のために公開されたが、承認のために必要な60ヶ国の2/3弱に至るだけであった。東南アジアの大きな国である、インドネシアとフィリピンが条約に参加したにも拘らず、南北の多くの重要な国が参加せず、条約が効力を発揮するにはもっと数年はかかると予想されている。何故そうなのか。イデオロギーと信念を非常に異にする国家間でさえ、多分以前に比べて相互協力と相互理解がよりよい状況である時代に、海洋法は明らかに人類の利益になるものがあるが、何ゆえ広く受入れられないのか。

 

我々はこれを心配しなければならないのか。それともただ流れに任せて行き、この世界的成果として、現行の地球規模の法的行政指導のように扱うべきか。あるいは我々は、法律専門家がそうであるように、慎重になり、国際条約としては伝統的に要求されるやり方、つまりすべての国に正式に調印されて、実行に移されるまで待つべきなのか。多くの皮肉屋たちが言うように、国連海洋法条約は難しい状況に置かれており、すでに時代遅れで、超大国の全面的な支持なしでは運用することは出来ないこと、そして不和を生み、不平等であり、少数にはあまりにも多くのことを、多くにはあまりにも小さなことを与えている、即ち人間の貧欲と利己心を考慮に入れていない。また超大国はとにかく自国のルールに従うであろうし、如何なる場合にも、海洋法は優先的な利益を認めない。結局我々は恐らく、第4次国連海洋法条約を準備するべきである、ということを認めなければならない。

 

この点において、皮肉屋たちが非常に有益な貢献をしたと私は考えている。皮肉屋達はいつも理想主義者たちより騒がしく、長く、一般的に不適切にものを言う。しかし、そういう皮肉屋の雑音は、良いイデオロギーは防御も、説明の必要さえもないと勘違いしている理想主義者に触媒として働くことがある。我々の中で、肯定的な地球的な変化のための働き手としての新しい国連海洋法条約の実在を信じている─本当に信じている者たちは、法律専門家であろうとも、あるいは政治家、社会学者、物理学者、経済学者、とにかく何であろうと、海が価値あるものであるとの自覚のために、─‘専門的な皮肉屋’や無学な懐疑主義者の態度ではなく、二つの主要なグループ、即ち政策立案者や一般人の態度をもって、多くのことを、もっと多くのことをしなければならないのである。我々はこのことを充分には実行してこなかった。お互いに話し続ける─それも非常に頻繁な方法でやっていくのである。そうすれば、これは絶対変わる筈である。

 

 

 

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