日本財団 図書館


10 解決のための共同努力

 

たとえ、今日、海賊が存続しようとしても、その撲滅に向けて積極的に努力している多くの組織が存在している。結論として、ここでは、すでに実行されている努力、及び、海賊行為の影響を防止するために将来求められる努力に関して記述する。主な論述の範囲は、国際的な協力が行われている地域、海賊に対する関連規則の司法権の拡大、海賊の取調べと起訴内容の公開、そしてこの問題に対する国際的な関心の喚起についてである。

 

再び東南アジアを例とすれば、多くの片務的、双務的、多国的な海賊対策が採れて来た。片務的なものとしては、1990年代の初めに、マラッカ海峡における問題を解決しようと、散発的に動いたのが最初である。しかし、1991年、財政的に余裕のあるシンガポールは、その領海内の十分な安全確保のため、パトロールや監視システムを積極的に改善した。インドネシアとマレーシアに比べると、シンガポールは大変小さな海域内での責任を負っている点では特殊なことである。1993年マレーシアは4つの海賊対策特殊部隊を新設し、インドネシアは海峡で活発に海軍による巡回を始めた。こういうインドネシアとマレーシアの場合、その軍事力と監視の強化とは、それぞれの国防資源の限られた特質上、高価に付くことが判ってきた。33)過去8年来、東南アジアにおいて国家間の双務的な協定も行われてきた。例えば、インドネシアとマレーシア間には海賊行為に関する情報交換を助け、共同対処のための指揮管制直通電話が設置されている。そしてインドネシアとマレーシアは、マラッカ海峡における共同パトロールを実施するために海上作戦計画チーム(Maritime Operation Planning (MOP) Team)を創立した。にも拘わらず、この相互協力の相乗効果を損ねる主権論争の余地がなおも多く残るのである。地域における多国的な努力としては、クアラルンプールにあるRPCの運用が最も好例となるが、それもまた東南アジア全域にその影響力を及ぼそうとしている。このような共同的な代理機関と、それ以外の諸国の連合機関は、マラッカ海峡の海賊事件の減少には大きな影響を与えており、他の被害地域に対してもよい実例として参考にすべきである。34)

 

海賊行為という頑固な問題に対する他の救済策としては、地域的な法律の制定や海賊行為を起訴する意思が欠けている地域、つまりソマリアがそのいい例であろうが、そういう海域(公海ではなく)において、効力のある国際法の司法権を拡大していくことである。海賊を包囲する国際協定は、例え海賊行為がどこで起きようとも、地球規模の抑止効果を持つであろう。このようにして主権を制限するやり方は、問題とならず、海賊をもっと迅速に、能率的に追跡し、起訴することになるのである。当然、IMOやIMBのような国際機構の警備部隊もこういうもっと強力な法令執行力を具備すべきである。35)

 

協力的な司法権の拡大は、IMBが、新たに制定された調査機関(Rapid Investigation Service)を通じて取組んでいる告訴が、能率的に処理されることに繋がるでしょう。

この機構は、国際運輸労働者連盟船員信託(International Transport Worker's Federation (ITF) Seafarers' Trust)からの2年間US110,000ドルの基金に支えられている。年に30〜40件は徹底的に調査されると期待されている。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION