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こういう新しい活動は航海を著しく遅延させることなく、事件の情報を迅速に政府に提供する。これは、IMBとITFの注目すべき努力であり、官民両者からの継続的支援を得て将来強化されていくことを願うものである。36)

 

結局、海賊行為に対する更なる努力のためには、海賊対処の難しさや悲劇に関する国際的な理解を深めなければならない。選り抜きの商業的、国際的な努力はあるものの、IMB、ITF及びIMOは、海賊事件はいまだに起きているという事実を納得させるように努力を続けていくべきである。東南アジアを例に取れば、海賊は、アセアン地域フォーラム(ARF:ASEAN Forum)、アジア太平洋経済協力グループ(Asia Pacific Economic Co-operation Group)、CSCAP (Council for Security and Co-operation in the Asia Pacific)のような地域的機構の議事日程を睨みながら、自分の生き方を探さなければならないのである。37)海賊行為が一般的に認められた分類や特性をもっていることが判ったとしても、海賊の定義自体が、依然として海賊防止の努力の障害となっている。この論文では、海賊行為は正に地球規模の問題であると述べたが、東南アジア地域を精緻に考察することによって、海賊問題の困難さを理解させた事に止まらず、問題解決のための対策の一部現状を紹介することが出来たものと考える。最後に。最近の世界中の年間発生率から観れば、海賊行為は海上貿易に多少影響していることになる。しかし、同時に、凶悪化が進むに連れて、海賊行為は船員たちの安全に大変大きな影響を及ぼすようになった。そういう訳で、私は、雇用船員のためを図った商船会社ならば、会社の海賊対策の努力が、単なる費用対効果ではなく、先見性をもって考えられなければならないと強く主張したい。

そして、海賊事件が発生する世界全域をカバー出来るように、国際的な司法権行使は強化されるべきである、と考えるものである。

 

 

 

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