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(7) 紅海:10件(図−3参照)

この地域では、スエズ運河を行き来しする船舶で混雑する航路を避けるために、沿岸寄りを通航しなければならないヨットが特に略奪されている。1997年にはカナダ海軍のフリゲート艦HMCS FREDERICTONが、イギリス国籍の外洋レース用ヨットLongo Bardaを攻撃しようとする海賊船の阻止に成功した。海賊らはヨットに向けて迫撃弾を発射したのである。カナダ海軍の迅速な介入がなかったら直ぐにでもそのヨットは乗っ取られるところだった。

 

(8) ナイジェリア海岸―セネガル海岸:8件(図−4「西アフリカの海賊」参照)

西アフリカの状況は、特に、西海岸を中心に一時世界で最も被害が多かったが、過去20年間に好転して来た。1981年そのピークに達していた時にはナイジェリアのラゴスの港で一日12件という記録もあった。セネガルから離れて漁船への攻撃は続いているが、過去5年間に見られたように頻繁には起っていない。1980年代初めにIMOはアフリカの西海岸が世界中で最も危険な海岸であることを明言した。しかし、最近海賊行為の脅威度が低下しているが、これは、この地域における国際海運の減少及び地方の海賊対策の一部が功を奏した主因となっている。

 

(9) ブラジル:13件(図−5「南・中央アメリカの海賊」参照)

1995年、ここだけが17件の公式記録を有する世界で第二の危険地帯であった。ブラジルの港で対応する保安部局は、リオデジャネイロのような港の停泊地に起きる盗難問題に鈍く、あるいは、さらに進んで全く対応出来ないことで悪名高い。ブラジルの現在の経済的混乱は、政府の怠惰な態度に繋がる問題を益々悪化させている。

 

(10) ニカラグア・コスタリカ国境:5件(図−5参照)

海賊は金銭的価値のある海老産業を餌食としているが、それは、麻薬の積み替えが混じっている時は、問題をもっと深刻化させる。Rio San Juan川の付近地帯の国境が不確定なため、管轄権の行使と緊急対応に迅速さが欠けていた。

 

7 海賊行為の全般的影響

 

世界中の海賊の被害を再吟味してみると、海賊行為の全般的な影響を論ずることの重要性がよく判る。その分析は、先ず、世界中の海上貿易に対する海賊行為の影響に関して記述し、その後は、この問題に関わる貨物、保険、運航、そして人件費の一層具体的な例について述べたい。

 

 

 

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