一方、場合によっては説明的な宣言を必要としながら、国連海洋法条約の他の部分に影響を与えた一般的なアグリーメントは実際に交わされてきている。つまり、それが、共通の目的に向かって小さなステップを踏み出す現実的方法であり、幾つかのイデオロギーをベースにした法的枠組みに効き目がある証である。
過去20年間に亙り、国連海洋法条約の歴史をざっと一通り観た評価からも、その条約が遠大な変化を経験してきたことを明確に認識すべきである。度々、条約のあらゆる分野において、刻々の変化に関係しながら、技術の発達がその変化に大きな推進力を与えたのである。発明と投資が奨励される社会では、少なくとも当分は起こると考えられることを認めるべきであるが、その奨励は知的財産の利益のための私的所有権と開発の保護を通じて、即ち、民間企業が行き渡っている社会で行われるのである。
技術革新は、必然的に利益の発生や収益能力に不公平を生むが、それは、国家規模の不満として重要な不一致を政策レベルに生ずることになる。立法審議会に度々政府代表として出席する国際法専門家達はそのような不満の緩和に貢献するのに適材である。 彼達は規則を明快に記述することによって貢献できる。その規則は、人類普遍の受容性があるので受け入れられるだろう。さらに有力な構成員達が、今までのところでは、相互依存の事実を認めようとしない国際社会で、国際法専門家による追求があるにも拘らず、競っているイデオロギーとの忍耐強い調整が可能との現実的呼び声がある。しかし、<理想>に触発された創造豊かな精神がなければ、そのような調整を始めることは難しいし、また成功もできない。
人類の‘共同の財産’として国の管轄権が及ばない海底に関する概念は、まず四半世紀に亙る実質的な変化を耐え忍ばなければならなかったが、<理想>の精神でマルタのパルドによって、先ず1967年の国連に唱えられた。実際に実行する気運をもたらすために<現実>としてそういう過程を経る必要があった。<理想>に波紋効果(Ripple Effect)とも言われるようなものがある。つまり、そういう<理想>のパルドの明快な説は、拡大された多様な国際社会の経済的不均衡の是正に必要なものとされている国連海洋法条約に多大の健全な発展をもたらした。そして、その国連海洋法条約は国際社会に多くの決定的な発想を与えて来たのである。更に波及して、'共同の財産'の<理想>及び国連海洋法会議によって用いられた秩序が、環境、気候、宇宙空間の資源を含め、共同事業の管理規則を明確にしようとする者達に霊感を与えてきたのである。