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1999年には37,500名が治療のために訪れたが、パリ地方及びロレーヌ・アルプス地方からの利用者が全体の40%を占めている。エクスレバンを訪れる患者数は年々およそ2.3%ほど増加している。リピーターが多く、新規の患者は全体の23%ほどである。宿泊施設を併設していないため、利用者は周辺の家具付アパルトマンやホテル、キャンプ場あるいは知人宅などに宿泊する。

治療は、周辺の病院等の施設に勤務する専門医が行っている。温泉治療以外にも、利用者を対象とした運動療法や食事療法のワークショップなど、体と健康に関わる多様なプログラムを実施していることが、エクスレバンの評判を高めていると言える。2000年にも新たな施設の建設を予定しており、外国からの利用者を増やそうと計画している。温泉治療は、症状によっては小康状態にある段階で行われる必要があるため、患者を飽きさせないためにも様々なレクリエーション設備を整えている。

エクスレバンでは、町をあげてリウマチをはじめとする病気の治療や研究に尽力している。特にリウマチに対する関心が高く、専門家による国際的な会議の開催やリウマチの専門誌の発行などを行っている。リウマチの治療のためエクスレバンを訪れる患者の平均年齢は65才と比較的高く、女性患者の数は男性患者の2倍に達する。

テルム・ナショノーの他、エクスレバンには呼吸器疾患に効果のある温泉吸入治療で非常に有名な民間施設マリオーズや、1948年に設立されたリウマチ温泉研究センターなどの施設がある。

<温泉療法の経済効果について>

温泉療法に対する評価が高まれば、新しい施設の建設や雇用の増大、それに伴う失業保険負担の軽減や、保険料の増加が期待される。また、薬物消費量も減少すると予想されるため、健康保険の累積赤字解消にもつながるだろう。周辺産業においても、間接雇用や設備投資の増大が見込まれる。

<フランスの温泉療法に対する評価・意識について>

フランスにおいても、社会保険は大幅な赤字となっている。そのため政府は一時、温泉治療をはじめとする数種類の治療を社会保険の適用外とすることを検討したものの、国民からの猛烈な反対を受けたためこれを断念した経緯がある。

<日本に対する提言>

現在の水浴や美容への温泉の活用を発展させ、より医療的な温泉療法を開始することを期待する。

 

4]日本医師側

<日本の健康保険制度の現状について>

1961年より皆保険制度が導入され、医療費の4分の3が保険料によってまかなわれているが、医療費総額は年々6%の増加率を見せており、国民保険・社会保険の慢性的な赤字の上に、老人保健及びこれから導入される介護保険が大きな負担となっている。ヨーロッパのように温泉治療に対する保障はなく、また、保険を適用できない治療は制度上受けられないことになっている。

日本の社会保険の国民負担率は36.5%となっており、ドイツの56.2%、フランスの62.3%と比較しても大変低い。社会保険は医療、福祉及び年金の資金源となるが、総額の半分以上は年金となるのが現状であり、年金予算を削減したり、消費税や保険料を引き上げたりするなどの対策を講じない限り、温泉療法まで保障の対象に入れることは非常に困難であると言わざるを得ない。

 

 

 

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