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<温泉療法の経済効果について>

イタリアのある調査によると、厚生省が温泉療法や温泉施設に1リラ投資するごとに、温泉治療に付随して発生する交通費や滞在費等に対する間接税から12リラの収入を得ることができる。また、薬物投与量の減少につなげることができるため、国の健康医療関連予算のうち病院に次いで負担の大きな薬物費用を軽減することができる。

<日本に対する提言>

ヨーロッパの温泉療法システムをそのまま導入することは困難であるが、何かから始めないといけない。例えば、ホテルに医療スタッフを常駐させたり、様々なマッサージや水浴療法を取り入れることから始めてはどうか。豊富な温泉資源を医療分野で利用しないのは間違っている。長寿の国であるだけに、まずはリハビリテーションからでも温泉の活用を始めるべきである。

 

3]マルティーヌ・ジャンス女史、ディディエ・フクリ氏(フランス)

<エクスレバンの温泉水について>

硫黄分を多く含み、粘度が高いためマッサージに適している。温度は115°F。

<保険制度について>

フランスでは政府の社会保障制度や、職種に応じた健康保険組合、更には民間の保険会社などが温泉治療経費の全額あるいは一部を保障しており、年間60万人にも達するフランスの温泉治療対象者のうち80%程度が何らかの保険を利用して治療を行っている。社会保障の場合は、治療が18日以上にわたるもののみに適用され、低所得者層の中には治療費以外の施設滞在経費や交通費なども1回の治療期間中900フラン(約1,800円)まで保障される例もある。フランスにおいても、保険が適用される温泉治療は1人当たり1年に1回であるが、複数の施設で同時に治療を受ければ、両施設の治療経費を保険で賄うことが可能である。ただし、温泉治療の効果を考慮して3年間は完全に保障される。なお、禁煙療法などの治療には保険が適用されない場合がある。

<温泉治療について>

フランスでは、72種類もの処置からなる基本的な治療のセットがあり、全国統一料金が定められている。平均的な温泉治療は1セット3,000フラン(約6万円)となっている。

温泉は運動療法、泥療法、鎮静療法のほか、マッサージやリラクゼーションにも利用される。治療プログラムは、診断を行った医師と温泉のセラピストが各患者の症状に合わせて作る。

<フランスの温泉関連施設について>

フランスには公営、私営の温泉関連施設が100カ所以上あるが、温泉治療を専門とする施設は厚生省の認可を受ける必要がある。これらの施設は、フランス南部のピレネー山脈地帯や、中央のオーベルニュ地方、あるいは東部のロレーヌ・アルプス地方に集中して見られる。その中でも、エクスレバンを擁するロレーヌ・アルプス地方には、全国の温泉治療対象者の半数が訪れる。

厚生省が運営する唯一の国立施設であるテルム・ナショノーは、エクスレバンにある国内最大規模の温泉治療施設である。従業員数は最大650名であり、そのうち250名はマッサージ師である。この施設では、温泉の水、蒸気、泥等を使った様々な治療が行われ、年間の約4万人の患者が治療で訪れる他、約2,000人が健康増進などを目的として施設を利用している。

 

 

 

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