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(2) 温泉医療会議

「ONSEN医療・美容・健康増進へのアプローチ」

1]イストヴァン・フルック氏(ハンガリー)

<ハンガリーの温泉水について>

ハンガリーには、全国に400余りの温泉施設があり、1日の総湯量は35万m3にも及ぶ。温泉水とは、30℃以上の自然の温泉水を言い、1000mg以上のミネラルを含むものは鉱泉水と定義される。鉱泉水のうち、特に治療効果が高いものは医療水と呼ばれるが、厳重なダブル・ブラインド・テスト(二重盲検)を通過したあとに厚生大臣の認可を受ける必要がある。また、温泉プールの温度は法律により40℃以下と定められているが、ぬるま湯は30℃、高温水は38℃と規定されている。なお、湖の温泉水は夏場は35℃、冬場は26℃くらいである。

<医者の役割と治療について>

医者には、診断、治療そして予防という役割がある。

治療は、薬物療法、外科療法、心理用法及び理学療法(温泉療法、運動療法、マッサージ、電気療法等を含む)の4種類に分けることができ、これらを組み合わせることにより最良の治療を見出すことが医者の役割である。重要なことは、様々な副作用が指摘される薬物療法をいかにして理学療法に置き換えるかという問題である。また、温泉治療は低温度で1回30分、高温度で10分までと指導されるが、残念ながら、例年この時間を超過してしまったために心臓麻痺で死亡する事故が起こっている。

温泉療法は、一次予防や二次予防として大変重要である。多くの調査研究によってもその効果が立証されており、オランダの保険会社が温泉療法経費を全額保障することに合意するなど、温泉療法に対する評価は高まっている。

<ハンガリーの温泉の歴史について>

1172年にブダペストのダニューブ川右岸に作られた温泉施設が、ヨーロッパ最古のものと思われるが、これは当時の皇帝マーク9世時代に、帰国の途にある十字軍の休養施設として建設されたものであった。

<ハンガリーの温泉関連施設について>

温泉療法が非常に重要な役割を果たしているハンガリーには、スパ・ホスピタル(温泉病院)をはじめ、スパ・ホテルやサナトリュウムなどの温泉関連施設が多い。特に慢性の運動障害や、事故や手術後のリハビリテーションのための温泉治療に大きく貢献している。これらの施設では、温泉療法をはじめ、全般的な治療が行われており、ヘルス・スパの場合は最低1名の医師が、また、スパ・ホテルの場合は3名の医師が常駐していることが義務づけられている。事故の際には、どの施設でも医師が1分以内に到着できるよう、救急医療体制が整備されている。その他、温泉プールの温泉成分濃度や、最大入浴人数に至るまで、法律が細かく規定している。大規模な施設は更に3種類に区別され、治療を主目的とした温泉治療施設、レジャーを主目的としたスパ施設及び、会員制の高級温泉施設がある。ただし、高級な施設でも1日6、7ドルと非常に安価であり、多くは政府の補助を受けて運営されている。

また、薬物療法の普及により1973年に閉鎖を余儀なくされたハンガリー温泉研究所は、1998年に再開している。

 

 

 

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