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2]アバノ(イタリア)

<地理>

アバノはイタリア北東部にあるベネト地域に位置する人口約1万8,000人の町である。この地域は、湯温78℃の温泉が豊富な火山地帯であり、近くにはモンテグロット、カジアノ、テオロなどといった温泉地が点在している。また、世界的な観光地として名高いベニスから35km、ベローナから90kmの所にある。

<温泉>

アバノには大型のホテルが集中しており、別府と似た景観をもっているが、日本の温泉旅館と異なり、全てのホテルが治療施設を備え、専門の医師が1、2名常駐することが法律によって定められている。年間宿泊日数は約300泊にのぼり、1人当たりの平均滞在日数は9、10日である。温泉保養地としての地位を確立しているアバノの町づくりは、旅館組合や商店組合と行政が一体となって進められており、日本の温泉地も学ぶところが多いものと思われる。

イタリアにおいても古代ローマ時代から温泉療法が盛んに行われており、現在全国に自然豊かな温泉保養地が300以上ある。イタリアでは、温泉は厚生省の管轄下になっており、全ての温泉治療活動は厚生大臣の監督の下で行われている。

温泉療法は、主にリウマチ疾患や慢性関節炎、循環器系疾患に効果があり、症状に合わせてリハビリテーションや泥療法、理学療法などを行う。治療は国民健康保険により保障されることが多く、患者は最低4,000円程度で2週間ほど滞在しながら温泉療法を受けることができる。患者の平均年齢は60才以上と高齢である。病気の治療はもちろん、健康維持、フィットネス、リラクゼーション、美容などにも温泉を活用していおり、これらを複合的に扱うことが重要である。

<その他>

アバノ市内には様々なリラクゼーション施設があり、100以上の屋内・屋外プール、80以上のテニスコートをほじめ、多くのゴルフコース、サイクリングコース、自然歩道、アーチェリー場などがある。芸術の町ベニスやべローナに近いことから文化的活動も盛んであり、また、食事やワインも世界的に有名である。

なお、現在、アバノ市とモンテグロット市を合併させようとする動きがあるが、実現すれば人口3万人の都市が誕生することになる。

 

3]エクスレバン(フランス)

<地理>

1998年6月に開催されたワールドカップサッカーフランス大会の際に、日本選手団のキャンプ地となったことから日本国内でも知名度が高まったエクスレバンは、フランス南東部のサモア県にあり、パリからTGVで約3時間、シャモニー、モンブランから90km、ブルジェ湖から2kmのところに位置する。人口は約2万5,000人であり、フランスの3大観光都市のひとつに数えられる。

<歴史>

ローマ時代から温泉地として有名であり、5世紀頃から多くの温泉施設が建設された。18世紀には王侯貴族が避暑や治療のために訪れ、19世紀にはナポレオン3世によって国立の温泉施設が誕生した。温泉のまわりには劇場やカジノ、ゴルフ場、ショッピング施設などの観光施設が集まり、海外からも多くの観光客が訪れるようになった。第二次世界大戦後に、社会保険が温泉治療に適用されるようになったことを受け、温泉利用者の数は飛躍的に増大した。長い歴史を誇る伝統的な温泉地でありながら、常に新しいものを取り入れる姿勢を大事にしている。

 

 

 

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