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・サイクリング・ロード

自転車の為のサイクリングロード作りを推進。それに併せて、町の緑化運動を進め、10年前まで緑がほとんど無かった街が今では緑豊かな町並みに変身している。

・カラー・プロジェクト

アバノ市内の8地区にそれぞれのべース・カラーをつくり、その色に合わせた街作りを推進する計画が、今年1999年11月から着工される。

主な計画は下記のとおり:

1)案内看板をそれぞれのべース・カラーで統一

2)環状線を建設

3)夜間は道をそれぞれのべース・カラーでライト・アップ

このプロジェクトにより、初めてアバノを訪れた訪問客もそれぞれの目的地への移動が容易になり、また、街並みの統一が図られる。

・プロモート・コンソーシアム

ベネト県の新たな条例の制定により観光マーケティングに関する同県からの補助金が新たに受けられるようになったのを契機に、プロモート・コンソーシアムが設立された。活動資金2億円のうち、1億はべネト県から、残り1億はアバノ市からそれぞれ出資されている。この組織を通じて官民一体となりマーケティングを推進している。主要事業は下記のとおり:

1)イベント(スポーツ、競馬、展覧会)の開催

2)見本市への参加

3)テレビやラジオを通じての広報

メンバーは市、ホテル業、商工業、県などの各団体代表8名(会長1名)で構成され、3年間のプロモート計画を立案する。メンバーはボランティア(自由意志・無報酬)で参加し、毎週1度の会議での決定事項を各自が代表する団体にもちかえり、承認を得て事業が推進される。承認が得られなければ、再度、メンバー全体での話し合いにかけられる。8名のメンバー以外にも、専門的なノウハウが必要な際には、ジャーナリスト等の専門家を臨時雇用する。また、大きなイベントを開催する際にはアルバイトやボランティアを募っている。予算は単年度ごとの事業評価により決定される。8名のメンバーの年齢は40歳から45歳だが、最年少はホテル・オーナー代表の31歳の女性。年齢、性別等に関係なく、メンバー全ての意見が平等に政策に取り上げられる仕組みとなっている。なお、アバノ市の観光課所属職員数は4人だが皆がフルタイムではない。大きなプロジェクトが実施される際には、課、係の枠を越えて、柔軟に対処している。

5] 将来の展望及び課題

過去10年間の温泉開発ブームの行き過ぎにより、現在、ヨーロッパ全土で温泉都市は1,000以上存在するが、競争が無いので対立も無いという。特にイタリア国内の他の温泉都市は20年前から変化が無い為、ヴェネチアに近いという地の利にも恵まれたアバノ市には現在、さほど強力なライバルは存在しない。コンソーシアム・メンバーによると、現在、市として抱える大きな問題は存在しないそうだが、市内の保養産業は民間のホテル経営に大きく依存しており、ファミリー経営を主体とする各ホテル間での意見の調整が大変そうである。また、アバノ市は2万人弱の小さな街であるので、人材の育成も重要課題のひとつである。

そのひとつの方法として、近隣の市町村から優れた人材を積極的に受け入れており、又、アバノ・ホテル専門学校はホテルスタッフを養成している。又、更なる保養客の確保の為、各ホテルではそれぞれ独自の政策を打ち出している。一例として、あるホテルでは、ホテル滞在客にはファンゴ・マッサージを無料で提供する方針で検討している。

 

 

 

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