このように不当な融資条件のため、造船事業者は深刻な危機感を抱いている。
4.0 マレーシア政府の支援措置
海事産業の発展、拡大の重要性を認識して、マレーシア政府は造船業の振興、発展のために、以下を目標とする工業化マスター・プラン(IMP)を打ち出した。
─重工業の発展と輸出の振興に向けた国家的努力の重要な要素とする。
─マレーシア国家経済の拡大に伴なう、海上荷動きの増大に対処する。
新造船・修繕船産業はIMPを支えて、以下のような面で目覚しい、重要な役割を果たすものである。
─多数の雇用機会を提供し、応用科学の分野でわが国労働者の技能を高める。
─鋼材、機械工業製品、化学製品、その他無数の関連産業の多様な国内生産を刺激して、国内海事産業の成長に寄与する。
造船業は経済、国防の両面で重要な資産である。各国政府、特に先進工業国の政府が直接、間接に造船業を支援するのはそのためである(第3表)。
マレーシア政府は主として以下のような面で、この重要な産業を支援している。
─造船輸出信用の供与。
─造船資材に対する輸入関税、その他の賦課金の免除。
造船業の急速な発展を図るため、政府は以下の各面で計画的かつ戦略的な方法で強力な支援の手を差し延べることを考慮しなければならない。
─Bank Industriの海事基金を増強して、自国船隊の拡張を促進する。
─造船業の売上げ、利益に対する課税、その他の面で有利な税制措置を講じる。
─国内造船所の能力範囲内の船舶建造には、国内建造を優先させる。
5.0 今後の方向
今後の数年間は海上荷動きの減少、運賃の低迷、修繕船予算の縮小、海外からのきびしい、かつ差し迫った競合から、マレーシア造船業はきわめて困難な時期を迎えることになる。各造船所は生き残りのために、この困難な時期を何とか乗り切らなければならない。そのためには造船業は生産性、経営面で最善の方法を導入し、特に以下の点に配慮しなければならない。
─CADなど、技術的変革の課題に対応するため、既存造船所の施設・設備の生産ラインにおいて一層高度の自動化を図る。
─1993年の輸出入統計は、小型艇や浮体構造物の総輸入額8億7,800万リンギットに対して、輸出総額は修繕船も含めて4億3,600万リンギットにとどまったが、これは輸入代替の余地を示している。
─自航バージ、セメント専用船、フェリーなど、特殊用途専用の15,000-20,000DWT級船舶の建造に政府が助成を与える。