これら諸国で成功した技術やアプローチの一部は移転可能かもしれないが、マレーシアの環境は短期的に変えられないものであることを認識しなければならない。そのため先進的手法を取り入れることが困難になっている。
取り入れたい要素としては、品質管理サークル、労働者に対するインセンティブ、生産性の高い工程、船舶設計・建造の合理化、効果的な組織、労使関係と労働力の弾力性、取引先との良好な関係、効率の高い生産計画、運営、管理などが挙げられる。
建造能力
マレーシア造船産業が直面する基本的問題は、限られた国内市場に対する依存度が高いのに対して、造船所が乱立していることにある。AMIMの調査によると、中規模造船所(1,500-5,000GRT)の平均稼働率は17%程度であり、小規模造船所(1,500GRT未満)では22%である。
この深刻な問題の原因としては、以下のような要素が挙げられる。
─国内造船所の建造隻数が非常に少ない。
─国内造船所では16,000DWT以上の船舶が建造できない。
─大半の船舶取得が中古船を対象にしている。
─国内造船所の提示船価が海外の造船所に比べて著しく高い。
─資金調達
─新造船、修繕船事業は多額の運転資本を必要とする。船主からの前払いは大抵は少額に過ぎない。特に現在のような不況時にはその傾向が顕著である(荷動き量が少なく、運賃が低迷し、さらにマレーシア・リンギットの価値下落などのため)。この困難な状況にあって、各造船所は円滑な事業運営のために資金調達を必要とするが、銀行側では融資に消極的である。
しかし船舶金融の経験が最も豊富なBank Industri of Malaysiaが、この変動の甚だしい産業のために、総合的な融資措置を講じるようになった。
この融資制度の主な特色は以下の通り。
・設備改善のための造船所資本支出支援プラン
・修繕船向け手形割引
・小型艇建造融資
・入札保証金融資
その他の要素
1997年に始まった経済混乱から資金繰りの問題が非常に深刻化している。その結果、造船所への資金供給は制約され、一時は年率17〜20%にも上った高い金利負担が、そうなくても深刻な造船事業者の財務状況をさらに悪化させている。返済が3ヵ月滞ると不良債権扱いになるので、この高金利は致命的である。