3.0 問題と課題
設備
マレーシアが世界の造船国として競争力を身に着けるためには、国内の設備および関連産業を大幅に強化しなければならない。多数の造船所で、作業スペースが狭く、設備の多くが旧式あるいは老朽化している。
事業の性格
造船業は景気の周期的変動にさらされている。国内の造船需要が限られていることから、無数の造船所で能力過剰となっている。
投資
80年代には投資があまり伸びなかった。新規投資は、より大規模な設備では巨額を擁するため、専らヨットやレジャー艇の建造設備に限定されたbMSEの70,000DWT級シンクロリフトで新規投資が行われることは明らかだが、深刻な経済危機のため市場の低迷は著しい。
関連産業
造船は各種の技能や関連事業に依存し、その調整を図らなければならない。船舶設計、冶金、エンジニアリングなど必要な技能や設備の多くは未発達で、一方工具や金型の製造、機械加工、鋳造などの関連産業、その他設計、計算、研究開発の関連専門機関なども未発達である。
人的資源
経験豊かな人材や下請事業者が不足していることから、マレーシア造船業が高品質、価格競争力のある船舶を建造する能力は制約されている。この問題が生じるのは、新造船工事量の変動が大きく、造船所が経験豊富な人員や下請事業者を育成し、雇用や契約関係を維持することができないためである。造船所間で、下請事業者は頻繁に移動する。しかも下請事業者の技術水準は低く、生産性向上に役立つような高度の機器を扱うことができない。
生産性の水準
日本や韓国の造船所の重要な特色の一つは、アジア地域内はおろか、ヨーロッパの造船所と比較しても遜色のない、高い生産性にある。日本の一部の造船所の生産性はCGTベースで(修正総トン数[CGT]は工事量の尺度であり、造船所間の比較に最も一般的に利用される単位である)年間約115CGTであるのに対して、マレーシアでは活発な造船所でも35CGT程度に過ぎない。
造船所経営と造船政策
先進造船国における造船所経営は、全く異なった文化的背景、人間関係、伝統に基づいた組織的意思決定、経営構造、手続きに従って行われている。