また日本の造船政策についても注意を喚起し、世界造船業が2回にわたって経験した深刻な不況について触れ、日本が世界的な需給不均衡を改善するために欧州と協調して設備削減等の徹底した構造改善策を実施することによりこれを乗り切ったことを説明した。さらに1991年に海運造船合理化審議会(海造審)が日本造船業の改革策を答申したことを指摘した。
日本の長期的対策については、報告書の7ページに言及した。1970年代の拡大の後のように、2000年以降にまたしても造船業の低落傾向が見込まれると述べた。これに対しては政策的、計画的に新規需要を創出しなければならないとされている。
宮村氏は次いで舶用工業について触れ、第II-1表以下の図表を参照し、1998年の従業員数が85年と比較して減少していることを指摘した。第II-3図を参照して、船外機が舶用工業製品の輸出できわめて大きな比重を占めていることを強調した。次に舶用工業に関する政策や措置に触れ、業界の体力を強化するには活性化と生産効率、技術の向上が重要であると指摘した。さらに宮村氏は第III-1表「造船関係国際協力」を参照して、JICA、JBIC、ならびにこれらの機関が提供している技術・資金援助に言及した。
質疑
中国代表:日本代表のプレゼンテーションで日本造船業に関する報告書に言及された。以前の報告書は承知しているが、本日の議長、冨士原氏が主催した特別委員会による、日本造船業についての最近の報告書についてお話を伺いたい。最近発表された報告書について、業界の反応も併せてお話頂けないか。
答:恐らく富士原氏が主催した研究会のことだと思うが、報告書の内容をかいつまんでお話すれば、現在及び将来の日本造船業界を取り巻く環境、あるいは市場構造の変化などを分析しさらに、将来の課題や取るべき措置についても論じているが、こういった問題について、日本政府の基本的な考えと対策を提言している。内容を簡単に紹介すると、まず将来の需給関係に触れている。2000年以降、供給過剰になり、需要は減退し、したがって2000年以降は非常にきびしい状況に直面することになるが、そこで日本造船業を健全に運営するにはどうしたらよいかを論じ、いくつかの策を挙げている。これらの措置が報告書に説明されている。そのうちの一例についてお話するが、まずコスト削減努力である。例えば同型船を連続して建造すれば、コスト削減につながるかもしれない。これは方法論の一例だが、他にもいろいろ選択肢がある。これまで日本の大手造船所は研究開発を推進し常に新たな種類の優れた船舶を提供し世界の造船業をリードしてきた。、このような大手造船所が果たしてきた役割は重要である。しかし、研究開発や設計能力の保持は、一方的なコスト削減努力とは相容れない面もある。つまりコスト削減努力は非常に結構なことだが、新たな船種を提供する、世界での指導的役割を演じる能力は失うべきではない。したがって、大手各社の協力を通じて、例えば2、3の大手造船企業が合併や、営業、設計、資材調達等における業務提携などによって経営資源の最適利用を可能とし、これによって世界のリーダーの役割を続けながら、同時に国際的なコスト競争力を維持することが可能になり、これは将来の業界にとってきわめて好ましいことである。