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ここで、ルック間の位置ずれはωΔtで、ωはω=KCで与えられる波浪の角周波数である。各強度の複素スペクトルは、fを空間周波数とすると式(6)のフーリエ変換

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から求められる。DC成分(空間周波数が0の成分)を除いたクロス・スペクトルは

S12(f) ≡ S1(f)S2*(f)

= δ2(f-1/L)exp(iωΔt) + δ2(f+1/L)exp(-iωΔt) (8)

となる。ここで、δはDiracのデルタ関数である。

従来の方法では、式(8)の絶対値を波浪スペクトルとするため、波浪方向を示す位相が失われ180°の方向あいまいさが生じる。波浪方向スペクトルを測定するには、まず式(8)に位相重み関数exp(-iΩΔt)を掛けると

S12(f) = δ2(f-1/L)exp(i(ω-Ω)Δt) + δ2(f+1/L)exp(-i(ω+Ω)Δt) (9)

を得る。ここでΩは「推測」した角振動数で、一般的には式(5)の深海における海洋波の分散関係から計算した値を用いる。もし、Ω=ωであれば、式(9)は

S12(f) = δ2(f-1/L) + δ2(f+1/L)exp(-i2ΩΔt) (10)

となり、式(10)の実数成分をとれば、f=-1/Lのスペクトルはcos(2ΩΔt)だけ抑制され、f=1/Lでの波浪進行方向のスペクトルが強調される。これが重み付きクロス・スペクトルを使った波浪方向スペクトルの測定方法である。この手法は、波浪画像スペクトルの位相をずらすことから「スペクトル位相変位法」とも呼ばれる。例えば、位相速度18m/sで進行している波長200mの波浪画像の場合、Δt=1.12sとすると、波浪進行方向と反対方向のスペクトルは、進行方向のスペクトルのcos(2ΩΔt)〜0.3倍の割合で低減する。さらに、本手法ではスペックル相関のないサブ画像を利用しているため、ノイズが抑えられ、従来のスペクトルより高いS/N比が得られる。

 

3 結果と解析

 

図2の左に1997年2月12日に取得された三陸沖のJERS-1 SAR強度画像(50 x 50km)と拡大した波浪画像(3.2 x 3.2km)を示す。実測データはないが、半島による波浪回折模様から波浪は沖から海岸に向かってレンジ方向に進行しているのが分かる。図2の右は1993年11月15日に取得された伊豆諸島海域のJERS-1 SAR画像(60 x 60km)と波浪の拡大画像(3.2 x 3.2km)である。同様に、島々による回折現象から波浪進行方向は南方(画像左下から右上)と判断できる。これらの画像の生データから3ルック処理したサブ画像を生成した。JERS-1 SARのパラメータは以下の通りである。

・ アジマス、レンジ分解能:6m、17m

・ 波長:0.235m(1.275GHz)

・ レンジ:697km

・ プラットフォーム速度:7.65km/s

・ 入射角:39°

・ 積分時間(シングル・ルック):1.7s

 

 

 

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