巻末資料
資料1 重み付きクロス・スペクトルを使ったJERS-1SAR スプリット・ルック画像からの波浪方向スペクトルの測定
資料2 略語集
資料3 海上風と波浪の衛星観測に関する参考文献
資料4 海上風と波浪の統計に用いたサンプル数
資料5 海上風と波浪の統計に用いた台風の位置
資料1 重み付きクロス・スペクトルを使ったJERS-1 SARスプリット・ルック画像からの波浪方向スペクトルの測定
重み付きクロス・スペクトルを使ったJERS-1 SARスプリット・ルック画像からの波浪方向スペクトルの測定
大内和夫
高知工科大学物質・環境システム工学科、Email:ouchi@env.kochi-tech.ac.jp
要約:従来の方法を使って得られる合成開口レーダ(SAR)画像からの波浪スペクトルには、180°の方向あいまいさがあり波浪進行方向の計測は出来なかった。本報告では、スプリット・ルック処理されたSAR画像を使って波浪方向スペクトルを測定する理論を解説し、陸域観測を主目的としたJERS-1衛星搭載のL-バンドSARの波浪データを使って本理論の応用可能性と計測精度を検討する。
1 はじめに
SAR画像からの波浪スペクトルの抽出には、波浪の強度画像をフーリエ変換する従来の方法が使われる。一般的に、JERS-1やERS-1/2 SARなどの画像はアジマス方向の分解能がレンジ方向のそれと比べて数倍優れているため、シングル・ルック強度画像のピクセル平均をとったマルチ・ルック画像、又はアジマス方向の全合成開口を分割して各々の強度画像の平均をとったスプリット・ルック画像が使われている。これらの方法は、アジマス方向の分解能が低下する代わりに、レンジとアジマス方向の分解能がほぼ同じくなる上、画像判読のさまたげとなるスペックル雑音を低下するという効果を持っている。以上の方法に共通な点は、得られた波浪画像スペクトルからは波浪の波長と方向は測定されるが、スペクトルの180°の方向あいまいさから波浪進行方向は確定されないことである。このあいまいさを除去するには、スプリット・ルック処理で得られた波浪画像のクロス・スペクトルに重みを付ける方法がある。この方法は、スプリット・ルック処理ではSARの生データを時間差のあるいくつかの小開口を使って処理するため各ルックにおける動的散乱体の画像位置が異なるという現象[1]を利用しており、現在では最先端技術となっている[2,3,4]。本報告では、まず本手法の基礎理論を述べ、次にJERS-1 SARの三陸沖と伊豆諸島海域での波浪データを使って得られた方向スペクトルを計測し、従来の方法で得られた結果との比較、及びスプリット・ルック画像の相互相関関数からの波浪位相速度の推定精度について検討する。
2 基礎理論
図1に本理論の基本を2ルック処理を例に説明する。スプリット・ルック処理では、全合成開口をいくつかのサブ開口に分割して画像生成するため、ルック1と2のサブ画像は、それぞれアジマス中心時間t1とt2に生成される。従って、位相速度Cでレンジ軸から角度αで進行している波浪の画像位置は、ルック1と2の画像ではアジマスとレンジ方向にそれぞれ
ΔX=CΔt/sinα
ΔY=CΔt/cosα (1)
の距離だけずれている。ここで、Δt=t2-t1はルック間の時間差で、
Δt=Rγ/V (2)
で与えられる。RとVは、それぞれレンジとプラットフォームの速度で、γはルック間のアジマス方向の角度(sinα〜α)である。式(2)はマイクロ波の波長λ、レーダの対地速度V、プロセッサのサブ参照信号の中心周波数の差Δfの関数として

と近似できる。式(1)にある位置の違いから波浪進行方向を測定するのだが、条件として、2波浪画像は少なくとも分解能幅ρ(=1ピクセルとする)以上離れていなければならず、さらに、2πの波長あいまいさを避けるために位置ずれは波浪波長L以内でないといけない。