また、1960年代後半は、東部西部共に水温が高い状態となり、その後1970年代後半まで、北太平洋西部熱帯域の海面水温は低かった。1970年代後半から東経150°以西の海面水温は正偏差に転じ、その後1995年までに次第に東経150°以東の海域も海面水温が正偏差となった。秋季においても東経150°以東の海域では1970年頃まで正偏差であるが、それ以降は一転して負偏差に転じた。一方、東経150°以西の海域では1970年頃まで海面水温は負偏差であったが、1970年代前半は正偏差、1970年代後半は負偏差、1980年代は正偏差、1990年代前半は負偏差と交互に変動している。
次に、表2.2から得られた台風発生の変動の特徴と、図2.8および図2.9に示した海面水温の変動の特徴を比較した。表2.3は10年毎の各年代における海面水温と台風の発生数の平年値からの偏差の符号を示したものである。
この表を見る限りにおいて、1970年代のように海面水温と台風の頻度の符号が一致している例もあるが、例えば、顕著に台風の発生数が多かった1960年代の西部海域における海面水温は負偏差であるなど、海域別、季節別の海面水温の変動と台風の発生頻度の変動との間には明確な関係があるとは言い難い。海面水温が28℃〜29℃の海域と29℃〜30℃の海域の台風発生率がほぼ等しいとの統計結果(藤井、1992)を考慮すると、十分な海面水温(この場合28℃以上)が与えられている太平洋西部熱帯域においては例えば大気安定度、熱帯収束帯の強さなど他の要素の変動が台風の発生頻度の変動に及ぼす影響が大きいと考えられる。
また、台風の発達に関しても海面水温以外の要素の重要性が以下のように指摘されている。2.2節に紹介したようにKuroda et al.(1998)やJ.-J. Baik et al.(1998)のパーセンタイル解析によれば、海面水温の増加とともに台風の最大ポテンシャル強度は増大している。