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速水他(1968)や大内(1970)は1900年頃〜1960年の約60年間のデータを用い、1940年代半ばまでは台風発生数と11年周期の太陽黒点数は逆位相で変動し、それ以後は同位相で変動していることを見出した。また、それとは別に台風発生数に20年程度の周期変動が存在する可能性を指摘した。Chan and shi(1996)によると、1960年頃から1980年頃にかけて台風の発生数は減少傾向だが、1980年代以降台風は増加傾向にあるようだ。また、湯本他(1999)は、現在は1995年から始まる低頻度期となっている可能性を指摘している。北大西洋西部のハリケーンや北太平洋西部の台風の発生には確かに数十年変動が認められるが、長期変化傾向の原因は明確にされてはいない。

 

2] 気候変動と台風の発生頻度

現段階において、熱帯低気圧の発生に関する大気のプロセスの理解は十分とは言えない。何年も研究されている割には、ある熱帯擾乱が台風やハリケーンにまで成長するかどうかは明らかではない。それでもGray(1979)などの研究成果により、熱帯低気圧の発生に関する大気の好適条件はおおよそ理解された。彼は熱帯低気圧の発生に適した条件として、

 

(1) 低い相対渦度

(2) コリオリパラメータ(赤道よりもやや高緯度より)

(3) 水平風の鉛直シアーが弱いこと

(4) 26℃位上のSSTと深い水温躍層

(5) 深い空気層にわたって条件付不安定であること

(6) 対流圏中層・低層における高い相対湿度

を揚げている。しかしながら、これらの諸条件は熱帯地方では珍しい現象ではなく、確実に熱帯低気圧の発生を決定づける条件ではない。熱帯低気圧は自然発生的には起こらずに起源となる初期擾乱によって発生する。したがって、温暖化などの気候変動に伴う熱帯低気圧の増減を予測するには、

(1) Grayの発生条件に代表される気候環境がどう変わるのか

(2) 潜在的な初期擾乱の頻度や強度がどう変わるのか

に着目すべきである。これまでの研究の成果から、基本的には、温室効果ガスの増加によって、(1)の条件は熱帯低気圧の発生を減じるようにはたらき、(2)は熱帯低気圧を増加させるように作用すると考えられている。

 

 

 

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