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個人にすべての要素を求めるのでなければ、プロジェクトチームを組織する際に、どういった教育背景の人に参加してもらうかが重要になってくる。その場合に、現状の教育プログラムのままでは、いわゆる理科系の他分野、文科系、芸術系の分野の知識や考えをもった人材が明らかに不足してしまうことが予想される。

問題解決を指向する工学分野においては、現在は他分野とみなしている部分を取り込み、新しい枠組のもとでの発展が期待される。過渡期にあると思われる海洋・海岸工学に要求される方向性を検討する場合、本研究のような現状の教育プログラムの解析を徹底することが重要であると考えられる。

 

5. 今後の課題

(1) 国内の調査対象の充実

本研究においては、このような解析において先行する研究例もないことから、試行錯誤を重ね、方法論の確立を念頭において解析を行ったため、国内の海洋教育を実施している大学について、数例を取り上げて解析するに留まった。しかし今後は、さらに大学数を増やし、日本の海洋教育全体について、網羅的な整理を行うことが望まれる。

(2) 海外の海洋教育との比較検討への展開

現段階では、試みとして米国における数大学のカリキュラム資料を収集し解析を試みているが、科目名の設定や分野体系が必ずしも共通でなく、本研究の解析方法を基にしながらも、各国独自の歴史、文化、教育システムに基づいた方法を再検討する必要がある。

(3) 海洋教育の発展性

以上の解析結果から、日本の海洋教育は、分野としてバランスがとれているかどうかを再検討する必要があると考える。教育や対応する学問の理念と、社会が要求する要素を擦りあわせること、全体性を重んじるか(ジェネラリスト養成)、特化するか(スペシャリスト養成)の、学科の特色が見えるようなカリキュラム構成も必要であろう。その場合、この研究結果は、ありうべき教育システムの検討材料となろう。実際に、社会が海洋教育に要求しているのは、ジェネラリストでもあるスペシャリストと思われるが、その養成システムは構築可能かを真剣に考えるべき時に来ている。

 

 

 

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