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(3) 3パラメータの取り方について

本研究では、1]理系/文系、2]人工/自然、3]応用/原理という3つのパラメータを取ったが、それによって分類された各分野の該当科目数には、設置科目の8割程を占める大きな分野がある反面、まったく該当科目のない分野が発生するなど、かなりのばらつきが見られた。現行カリキュラムの傾向を見るという本研究の目的にとっては、このような偏りは示唆に富んでいるが、あまりに偏りの多いパラメータを選ぶことは、解析自体を無意味にしかねない。今回この3パラメータを選択した趣旨は前に述べたが、他にも基礎か応用か、など、様々なパラメータが考えられる。

今後もパラメータの選択に関しては、解析の目的が何であるかを踏まえて十分な検討が必要だと思われる。

(4) 単なる分類を越えて

本研究では各パラメータに対して、極性として単純に+、−と原点の3カテゴリーしか与えていないが、今後は5段階評価や、さらに細かいカテゴリーでの評価をしていくことも興味深い。3パラメータに対してそれぞれ値を与えることで、3次元空間上に座評点として各科目を配置し、より視覚的に解析することも可能だろう。

(5) 新しい海洋学・海岸工学教育にむけて

上記のような作業を通じて、完全に網羅はしていないが、日本の大学での海洋教育の分野の分布特性が把握された。この特性が社会に輩出される人材の指向性も規定されていると考えられる。そこから判断すると、現実の日本の海洋関係の現場で現在発生していながら解決されない、あるいは、今後発生するであろう問題に対して、これらの人材が対応可能かどうかを予想することも可能であろう。さらに、卒業・修了後のオン・ジョブ・トレーニングで、大学教育でカバーできなかった部分を補う場合の参考資料とすることも可能であろう。

例えば、海洋・海岸工学分野では、新しい海洋・海岸保全の考え方に対応できる人材の確保が急務である。海岸保全の計画立案や実行にあたって、将来的には環境や住民参加といった概念が強く必要とされることは確実である。その場合に、基本的な、海岸に関する専門知識と経験を持ちつつ、従来型のエンジニアの枠を超えた個性と専門領域をもった人材が必要となると予想される。例えば、合意形成を行いつつ、周辺住民が満足するデザインをもち、景観にもマッチし、さらに環境保全的にも本当に機能する海岸構造物を設計する場合には、新しいタイプのエンジニアが求められるであろう。

 

 

 

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