注1. 温室効果
「二酸化炭素は太陽光線のうち赤外線を吸収するので温室効果があり、このため、大気中でその量が増加すると地球が温暖化する」と説明されている。しかし、この説明では温室効果と温暖化の関係を直感的に理解することはできない。そこで、目に見える例で両者の関係を説明しておく。
地球は全体として1.5・1017Wのエネルギーを太陽から受けると同時に同量のエネルギーを宇宙空間に放出している。したがって、エネルギーの収支は0である。このような状態を定常状態という。
今、1つの水槽を考えてみる。この水槽では上から常時水が供給されるとともに、下の栓を通して同量の水が流出している。したがって、水の収支は0であるため、水位は一定に保たれている。これが定常状態である。このとき、栓を少しだけ絞ってみる。そうすると、栓を通して流出する水の量が少なくなるため、水槽の水位が上昇する。水位が上昇すると栓の部分での水圧が高くなって、水の流速が速くなる。栓を通して流出する水の量は栓の断面積と流速の積で決まる。したがって、水位の上昇とともに、流失水量が増加して、やがて流入水量に等しくなり、水位も一定となる。つまり、新しい定常状態に達する。この定常状態と以前の定常状態を較べると、新しい状態の方が水位が高い。
二酸化炭素による温室効果を考えるとき、上の例で二酸化炭素の量の増加が水槽の栓を絞ることに、地表温度の上昇が水槽の水位上昇に対応する。すなわち、水槽の栓を絞る(二酸化炭素の量が増加する)と水位(地表温度)が上昇する。
1783年に起きた浅間山の大噴火のため、数年間地球規模で気温が低下した。これは、大気中に放出された粉塵により、太陽光源がさえぎられたことによる。これを先の水槽の例で説明すると、流入水量が減少したため、水位が低くなったことに対応する。
注2. 酸素と水素の同位体分別酸素と水素の同位体組成は、通常それぞれ次式で与えられるδ18OとδDで表現する。
