トラップの型としては、背斜構造以外に礁がある。最近は、石灰岩の1種であるストロマトライトが注目されている。ストロマトライトとはラン藻などの光合成に伴う分泌物で形成された炭酸塩岩石である。ストロマトライトは、その縞状構造が特徴的である[注7]。この縞状構造は、まず肉の薄い椀を伏せて重ね上げて柱を作り、この柱を隙間なく並べた状態を連想すれば、理解できる。このストロマトライトの構造が形成されるとき、多数の砂粒が縞状構造の中に取り込まれるため、全体として空隙率が高くなる。
9. CO2の固定
化石燃料である石油も石炭も原料物質は生物体である。生物の遺体が熱を受けて分解して、石油あるいは石炭となる過程をそれぞれ石油の熟成あるいは炭化(あるいは石炭化)という。
石油は各種の鎖状および環状炭化水素の混合物である。したがって、それを一種類の化合物で近似させることはできない。しかし、議論を単純化するために、天然ガスの主成分であるメタンCH4で近似してみる。生物体を単純化した化学式(C6H12O6)、とCH4と比較すると、石油の熟成過程での炭化水素の変化を、
(C6H12O6)n→3nCH4+3nCO2 (18)
と書ける。これによると、石油の熟成とは単純には生物体から二酸化炭素が抜ける反応といえる。ただし、これでは単純化しすぎである。しかし、石油の生成過程での炭化水素の変化をかなりの程度理解することができる。熟成過程では、まず第1に、分子量が減少する。すなわち、(C6H12O6)nのnが小さくなる。次に、C:H:O=1:2:1のうち、酸素の比率が減少する。一方、C/H比は一定か、多少減少する。ただし、油母岩(oil shale)やタール砂岩(tar sand)を石油の一種に含めると、C/H比は増加するともいえる。
炭化の最終生成物は石墨Cである。これと生物体の化学式を比較すると
(C6H12O6)n→6nC+6nH2O (19)
と書ける。すなわち、炭化とは単純には、脱水反応である。ただし、炭化の過程でメタンが発生し、これが炭層ガスとして、石炭中の割れ目に蓄えられている。すなわち、個々の炭化の過程を単純に脱水反応で近似することはできない。
生物体から石油や石炭が生成するまでには、熟成過程や炭化の過程があるものの、化石燃料の利用とは、単純には反応(8)の逆反応を起こさせることである。したがって、その利用によって二酸化炭素が発生する。