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これがコンクリートである。コンクリートは現代の各種建築造物になくてはならない構造材料である。

石灰石は、セメント以外に、製鉄における溶融材、タンカル(炭酸カルシウムの略)、カーバイド、ソーダガラス、製紙、製糖などに用いられている。

石灰石が変成作用を受けて方解石の結晶が大きくなったものを大理石という。大理石は花崗岩(石材名は御影石)と並ぶ重要な建築用石材である。古代ギリシャやローマの建物は大理石を柱として建てられている。現代では、舗石、石段、あるいは建物の床や壁の化粧板として使われる。大理石はまた古代より彫像用材料としても使われている。ミロのヴィーナスはその形の美しさとともに、その純白さも人気の一部であろう。近世ではミケランジェロのダビデ像なども有名である。

近年石灰岩あるいは大理石を使った美術工芸品が酸性雨の被害を受けている。反応(3)に示したように、炭酸カルシウムは酸(水素イオン)が存在すると容易に溶解する。屋外に置いてある美術品が酸性雨を受けると、炭酸カルシウムが溶出し、次第に突出部が丸くなって形状が変わる。また、美術品の石材に方解石以外の鉱物が混在していると、それらの方が酸性雨に対して強いため残存し、あばた状の斑点が現われたりもする。

 

8. 鉱物およびエネルギー資源

石灰岩はそれ自身が鉱物資源であるのみならず、他の鉱物資源の生成に貢献するとともに、エネルギー資源である石油の貯留の場も提供している。

地殻存在度に較べて対象元素が10〜10000倍濃集している場所を鉱床という。最も一般的に知られている鉱床を示す用語は鉱脈で、例えば「○○金脈」などと比喩的にも使われている(ただし、地質学では「金脈」とはいわずに、「金鉱脈」という)。この鉱脈を構成する鉱物は200〜300℃の水すなわち熱水から沈殿したと考えられている。珪酸SiO2をある程度溶解した熱水が割れ目を上昇する過程で冷却され、その濃度が石英の溶解度と一致すると、石英が沈殿して石英脈が形成される。このとき自然金が一緒に沈殿すると金鉱脈となる。

鉱脈が石灰岩と交わっていると、脈中を上昇してきた熱水は炭酸塩鉱物と反応してザクロ石や単斜輝石を主体とするスカルンと呼ばれる岩石が生成する。例えば、スカルン鉱物の代表である珪灰石CaSiO3や透輝石CaMgSi2O6は、それぞれ、

CaCO3+H4SiO4→CaSiO3+2H2O+CO2↑ (16)

 

 

 

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