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このような過程で、地下に大きな空洞が形成される。一方、炭酸塩団塊のところで説明したように、反応(6)や(7)により、水溶液から炭酸カルシウムが沈殿する。例えば、空洞の天井に割れ目があって、そこから炭酸カルシウムに飽和した地下水が流下しているとする。何らかの原因によりこの地下水の流量が減少すると、地下水は天井から流下せずに滴下するようになる。このような状態では、蒸発した水の部分に溶解していた炭酸カルシウムが沈殿するので、その沈殿物により割れ目が塞がれる。これによって、天井の崩落が防がれ、大きな地下空洞が安定に存在できるようになる。以上が鍾乳洞の形成される大雑把な過程である。

地下の空洞が大きくなり過ぎると、当然その天井は崩落する。このため、地表には陥没地形が現われる。このようにして、凹凸の繰り返した地形ができる。これがカルストである。したがって、鍾乳洞とカルストはしばしば1つの組み合わせとして現われる。山口県の秋芳洞と秋吉台がその好例である。

鍾乳洞とカルストはそのみごとな景観から観光地となっている。中国大陸はその半分が石灰岩で覆われているため、大きな鍾乳洞やカルストが存在する。なかでは、貴州省の桂林や雲南省の石林が有名である。

 

7. 石灰石資源

英語のlimestoneを表わす日本語として「石灰岩」以外に「石灰石」がある。通常岩石名は○○岩、鉱物名は○○石(あるいは○○鉱)と名づけている。しかし、「石灰石」は鉱物名ではなく「鉱石となる石灰岩」を指す[注4]

生物は反応(7)で、炭酸カルシウムを固定する。このとき生成する鉱物は方解石の場合と霞石の場合があるが、時代が経つとすべて方解石になることは既述した。このため、日本などで資源として利用している石灰石の主成分鉱物はすべて方解石である。石灰岩は、そこに含まれるCaOを対象に利用され、工業鉱物資源[注5]に分類される。

日本はほとんどの原料物質を外国からの輸入に頼っている。これに対し、石灰石は数少ない自給可能資源である。しかも、良質である。石灰石の最大の用途はセメント原料である。石灰石と粘土を混合して焼成すると、珪酸カルシウムとアルミン酸カルシウムの混合物ができる。これがセメントである。セメントに水を加えて放置すると上記鉱物が水和し、新しい化合物が生成する。適量の粗骨材および細骨材[注6]とセメントおよび水を混合して、セメントを水和させると、新しく生成した水和化合物が糊の役目をして骨材を結合させる。

 

 

 

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