方解石のCaの半分をMgで置き換えた化学式をもつドロマイトCaMg(CO3)2は、方解石と同様にナイフで疵がつく。この両者は希塩酸を用いると容易に区別がつく。すなわち、ドロマイトの方は、希塩酸を掛けても、常温ではほとんど発泡しない。
以上述べたことから明らかなように、方解石を主とする石灰岩は容易に、特に酸性の水の存在する条件ではさらに容易に風化される。このため石灰岩地帯が侵蝕されると、洞穴や特殊な地形が現われる。前者を鍾乳洞、後者をカルストという。
岩石の風化・侵蝕は、大きく化学的過程と機械的過程に分けられる。化学的過程では構成鉱物の粒界に存在する物質が溶出する。また、構成鉱物が化学反応により水和鉱物に変るときに、陽イオンが溶出する。例えば、カリ長石KAlSi3O8と灰長石CaAl2Si2O8は、それぞれ、
2KAlSi3O8+3H2O→Al2Si2O5(OH)4+4SiO2+2K++2OH- (14)
CaAl2Si3O8+3H2O→Al2Si2O5(OH)4+Ca++2OH- (15)
という反応でカオリナイトAl2Si2O5(OH)4に変わり、カリウムイオンやカルシウムイオンが溶液成分となる。この結果、鉱物間の結合が弱くなる。このような状態の場所を水が流れると、その運動エネルギーにより、岩石は削剥される。これが機械的侵蝕である。岩石を削剥するためには、流水がかなりの運動エネルギーをもっている必要がある。このため、地下水により、その通路で化学的風化は進行するが、機械的侵蝕はほとんど起こらない[注3]。
水底の堆積物では、その上に次の堆積物が積もるため、次第にそれが存在する深度が増す。この過程で砕屑粒子の間隙に存在した水は排出され、岩石の空隙率(=空隙体積/全体積)が低くなる(空隙率は孔隙率ともいう)。これを圧密という。堆積岩はいろんな段階の圧密を受けたのち再び地表に現われる。このとき、圧密の程度が低い岩石は、機械的侵蝕に対して弱い。これに対して、堆積岩は一般に化学的風化には強い。それは、その構成鉱物が反応(14)や(15)などで生成した常温で安定な相であることによる。
堆積岩は一般に化学的風化に強く、また地下では機械的侵蝕が起きないということに反して、石灰岩は化学的に風化されるとともに、地下で機械的にも侵蝕される。このため、石灰岩地帯にはしばしば鍾乳洞が発達する。
地下水は、砂岩のように空隙率の高い岩石を除いて、一般的に割れ目中を流れる。石灰岩中の割れ目を通って地下水が流れると、反応(11)や(12)により、その構成鉱物が流出する。このため、割れ目は次第に幅が広がる。また、割れ目の間の塊が落下、流失することもある。