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海底熱水作用は、沖縄諸島の中国大陸側に位置する沖縄トラフなど、背弧海盆でも見られる。それに伴って、ここでも、中央海嶺と同様、海底熱水成鉱床が生成している。ただし、その化学組成・鉱物組成は多少異なり、秋田県北鹿地域に広く分布する黒鉱型鉱床に類似している。なお、海底熱水鉱床の鉱化流体は、海洋地殻中に流入した海水がマグマで加熱される過程で、玄武岩中の有用成分を溶かし込み、上昇してきたものと考えられている。

沿岸部を除いて、海底の水温はほぼ4℃である。また、一般に海底には生物の遺骸を含む未固結の堆積物が形成されている。この2つの理由により、海底下にはメタン水和物の鉱床が存在する(松本、1992)。メタンなどの気体成分を溶解した水は、低温で気体水和物と呼ばれるシャーベット状の固体になる。この化合物は、水分子でできる籠状の構造に気体分子が取り込まれているため、構造的には包摂化合物と呼ばれる。天然では、最初シベリアやアラスカなどの永久凍土の地下から発見された。その後、海底下の探査が進んで、海底下には鉱床を形成するほど多量のメタン水和物層が存在することが判明してきた。このメタン水和物層は、ほぼ海底面に平行に発達している。つまり、海底堆積物中の等温面に沿って発達している。メタンは堆積物中の生物遺骸が分解して生成されたと考えられる。

海底および海底面下の探査を考えた場合、大気下の陸地より有利な点がいくつかある。最も有利な点は、弾性波探査(地震探査や音波探査の総称)が容易に利用できることである。弾性波は、密度の異なる物質の境界面で反射される。この反射波を受信することにより、物質の密度の違いを遠隔で測定することができる。これが弾性波探査である。海域では、音の発生器と受信器を船で曳航することにより、ほとんどあらゆる場所で音波探査の適用が可能である。まず、音波は海水と海底堆積物の境界で反射される。これにより、海底地形が測量される。次に堆積物中に入った音波は、堆積物の密度が変化する面で反射される。未固結の堆積物と固結した堆積物では、密度が大きく異なるため、音波は容易に反射される。これによって、メタン水和物層が発見された。

石油鉱床の位置は、堆積岩の大きな地質構造に規制されている。このような構造は、地震探査の格好の対象物である。発見された石油は流体であるため、比較的容易に地上ないし海上に取り出すことができる。これが大陸棚の資源で、石油が最も多く開発されている理由である。

石炭鉱床も層状であり、弾性波探査の適用が可能である。しかし、石炭は固体であるため、未だに人がこれら資源の存在する場所に入ることによって、採掘されている。このため、深部の開発はコストが嵩む。これが、開発されている海底石炭鉱床が少ない理由である。

 

 

 

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