日本財団 図書館


鉱物鉱床は、石油や石炭などの燃料鉱床に較べて、鉱床の存在位置を規制する地質構造の規模が小さい。このため、弾性波探査では鉱床の存在位置をほとんど絞り込めない。また、弾性波探査等の物理探査では、岩石の物性値の空間的分布しか把握できない。これに対し、鉱床特に鉱物鉱床では、化学的性質の空間的分布を把握する必要がある。そのためには、各地域において物性値と化学組成との関係を知る必要がある。これには、実際の試料を手に入れなければならない。この試料の採取に経費が嵩むため、海域での鉱物資源の探査は敬遠されている。

1952年、中国の東北部で発見された大慶油田は、石油鉱床の探査に革命的知見をもたらした。それまでに発見された大油田はすべて海成層を母岩としていたのに対し、大慶油田は陸成層中に存在していた。この発見により、それまで排除されていた陸成層からなる堆積盆も探査対象に加えられ、次々に成果を挙げている。しかし、世界の石油資源のほとんどが、海成層を母岩としていることに変わりはない。したがて、石油探査にとって海洋地質学的知識が未だに最重要項目である。

水中の堆積物が固結した堆積岩には、堆積当時の水が捕獲されて残っている。これを地層水という。典型的な石油鉱床では、トラップの上部に天然ガス、次に原油、下部に塩水が、それぞれほぼ水平な境界面をもって存在する。この塩水も過去の海水である。海成の堆積物で、多量の海草がともに沈積した場合、その堆積岩の地層水には、生物の分解で発生するメタンガスとともに、海草に含まれていた沃素が溶解している。このような過程で生成した天然ガスと沃素の鉱床が、千葉県の茂原地方に広く分布している。この地方の沃素生産量は、世界の2/3に達する。

石炭とは、枯死して地中に埋没した植物が、還元環境下で炭化(単純には、C/H比が上昇)した結果の産物である。地球の歴史には、この石炭が大量に産出することで特徴づけられる時代があり、それを石炭紀と呼んでいる。もちろん、この時代以外にも多くの石炭鉱床が生成している。いずれの時代の石炭鉱床も、その原料となる植物は、海水と陸水とが混じり合うような環境に生育していたことが、母岩となる堆積岩の解析から明らかになっている。ここでも、海の存在の重要さが認識される。

海底熱水鉱床のところで説明したように、これらの鉱床は陸域のキースラーガー型鉱床や黒鉱型鉱床に類似している。したがって、これらの型の鉱床の生成期機構の解明と探査指針の抽出にとって、海底熱水鉱床の調査結果は大きな示唆を与える。最古の海底の年齢は約2億年であり、それより古い海底は大陸下に沈み込んだと考えられている。これら沈み込んだ海底の一部は、その後陸域での火成活動により、再び地表に現れている。この過程で、各種のマグマ成鉱床が形成されている。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION