砂金や砂白金の鉱床も存在するはずである。これらの海底砂鉱床をいかに発見するかは大きな課題である。
大陸棚の地質は、基本的に大気下の陸地と同じと考えられている。したがって、大気下の陸地で見られるすべての燃料および鉱物鉱床が期待される。このうち、最もよく調べられ、大々的に開発されているのが海底石油鉱床である。メキシコ湾ペルシャ湾などの石油鉱床は、その開発が陸域から海域へと進んでいった。また、北海油田はすべてが海域に存在する。海底石炭鉱床も開発されている。しかし、その割合は、石油鉱床に較べて微々たるものである。さらに、海底下の鉱物鉱床に至っては、まったく開発されていない。これらの相違が生じた原因については、後述する。
深海底表面は、大気下の地表とは異なる環境にある。このため、独特の鉱床が存在する。そのうち、主なものは、マンガン団塊、富コバルトクラスト、および海底熱水成鉱床である。
深海底表面の堆積物上に、ジャガイモ大の黒色の団塊が存在する。鉄・マンガンの水酸化物と陸源の砕屑物を主とし、少量の自生鉱物からなるため、マンガン団塊と呼ばれる(正路、1991)。有用金属元素として、マンガン以外に銅とコバルトを含む。
団塊はほとんどが堆積物表面から10cm以浅に存在し、1mの深度まで入ると皆無である。この産状から、団塊が未固結の堆積物中に浮いているように見える。しかし、密度の関係からそのようなことはあり得ない(団塊は約2.2g/cm3、堆積物は約1.5g/cm3)。4価のマンガンは難溶性であるに対し、2価のマンガンは易溶性である。このため、堆積物中に埋没したマンガン団塊中の4価のマンガンイオンは、生物遺骸の分解によって生じる還元環境で2価イオンに変わり、間隙水に溶出すると考えられている。ただし、溶解途上のマンガン団塊は未だに発見されておらず、1つの大きな謎である。
深海底には多数の火山が存在し、これを海山という。ハワイ諸島はこのような海山で、標高が海水面より高くなった火山である。海山の山頂あるいは山腹の水深1000〜2500m付近がマンガン団塊と同様の物質で被覆されていることがある。この被覆物は、マンガン団塊に較べてコバルトに富むため、富コバルトクラストと呼ぶ(正路、1991)。富コバルトクラストには、白金も濃集している。
大西洋中央海嶺や東太平洋海膨などの海洋底拡大軸では、玄武岩が噴出して、現在新しい海洋底が誕生している。この玄武岩の火山活動に関連して、海水を起源とする熱水も噴出している。この熱水と海水が混合すると、熱水に溶解していた硫化物や硫酸塩が過飽和となって、沈殿する。この沈殿物が海底熱水成鉱床を構成する鉱物である(正路、1991)。その鉱物組成は、愛媛県の別子鉱床で代表されるキースラーガー型鉱床に類似している。