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人口問題の取り組みは、まずこうした適正人口の推定から始めることが一つで、その場合に食糧の自給自足を原則にして考えてみることだと思う。東京、大阪、名古屋などの大都市、それから地方の県庁所在都市、は自給自足は難しい。こうした大都市の必要性を真剣に考え、必要性が認められたならばその規模を考え、そしてそれをいかに維持するかを考えることである。現在のような自然発生的に出来上がった巨大都市は巨大なエネルギーと物質の投入を必要とするため、社会の持続性を危うくするので、その効用と同時に存在を見直す必要がある。

一方、もう一つの個人の欲望の解決は簡単ではない。欲望は人間によるエネルギーや物質の使用量とほぼ比例するので、それらの利用の面でから考えてみる。私たちが現在利用しているエネルギーや物質資源は、どれも濃い資源という特徴がある。濃い資源は分布が限られていて、使っていくと枯渇するし、現在のように使用したままで放っておくと環境汚染を引き起こす。個人の欲望問題の直接の解決策は、エネルギーや物質の使用量を落とすことであるが、それは容易ではない。次善の策は、濃い資源を薄い資源に切り替えて利用することである。そうすることによって、資源の枯渇と環境汚染をかなりの程度回避できる。ただ、薄い資源は利用効率が悪く、これまで積極的な利用はされなかったので、技術的問題をクリアーしなければならない。もちろん、エネルギーと物質資源のより効率的な利用の仕組みは鋭意工夫しなければならない。

エネルギーやさまざまな物質の利用に合わせて、さらに私たちはさまざまな天然物や非天然物を人工的に合成して使っており、これらも環境に出て悪影響を与えて問題を起こしている。これへの対処は、人工合成物質は徹底管理して野外には絶対に出さないようにすることである。

また、環境への影響は人口と個人の欲望の掛け算で効いていくので、個人の欲望を大きくしたい場合には、人口を減らすことを工夫することである。

 

食糧自給率の低い日本と打開の方向

さて、以上のようなことを考えて日本の現状を見ると、事態は極めて深刻である。まず、食糧の自給率がカロリーべースで40%台で、米が不作の年には30%台にまで落ちている。食料の輸入が止まったら、単純に考えれば半数以上の人が餓死することになる。このように食糧の自給率の低い国は先進国にはないし、大国の中では日本だけである。1995年に農林水産省が行った10年間の長期予想では、最大限の政策的努力をしてやっと現状維持で、自給率は今後下がり続けるという悲観的なものである。

 

 

 

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