総合型地域スポーツクラブを推進するNPO法人「クラブネッツ」が、5月15、16日の両日、国立オリンピック記念青少年総合センターでセミナーを開催した。全国からクラブづくりに関心のある、あるいは実際に携わる約130人が集い、総合型地域スポーツクラブに関する最新の情報交換を行った。
初日のシンポジウムでは、(株)ゼクタ・代表取締役の月岡泰志氏が、海外事例の紹介に加えて香川県詫間町が町おこしでつくった「たくまシーマックス」を紹介した。この施設の運営はエグザスが行っており、4月にオープンしてすでに町民の約3割にあたる3,500人が加入し、成功している状況を報告した。今後は総合型地域スポーツクラブとしての展開を計画中とのことである。
午後のサロンミーティングでは、総合型地域スポーツクラブづくりに取り組んでいるクラブ運営者から、設立から現在に至るまでの紆余曲折が報告された。
日本体育協会のモデル地区指定を受ける群馬県新町スポーツクラブは、スポーツ少年団を核としたクラブづくりを行っており、着手した当初は町の体協・学校・行政(体育指導員含む)すべてが行く手を阻む壁となっていた、と報告した。
わが国の先進事例として注目を浴びる愛知県の成岩スポーツクラブは、クラブの設立には推進母体の形成が一番のポイントであり、総合型地域スポーツクラブの向こうに何を描くかが重要と説明し、市町村行政に対しては、総合型地域スポーツクラブの「公益性」の認知を訴え、これまでのチームクラブではないことを強調した。また、岩手県遠野市はクラブの運営を誰がするのかが見えてこないこと、富山県福野町は理事のやる気、行政の支援、施設の充実が成功につながったことなどを報告した。その他、栃木県石橋町(グリムの里スポーツクラブ)や大阪府の堺スポーツフォーラムからも本音での報告が続いた。
翌日は、スポーツNPOとPFIの活用について討議がなされ、NPO法人の申請を検討しているスポーツ団体などから定款の書き方についての質問が相次ぎ、シーズの松原明氏やクラブネッツの水上博司氏から具体的なアドバイスが行われた。スポーツ団体のNPOに対する関心の高さが印象的だった。
サッカーだけじゃない 日本で開催される世界大会
ワールドゲームズ秋田2001まであと2年となった。新しいコンセプトで開催されるこの大会は、わが国スポーツ界が21世紀のスタートを飾るに相応しい節目のイベントとなるだろう。超一流の力と技のぶつかり合いを目の当たりにして、秋田でのスポーツ熱が一斉に高まることも予想される。長野五輪で影響を受けた子どもたちがカーリングやアイスホッケーにチャレンジする姿が数多く報じられたように、秋田発のスポーツムーブメントも期待される。
ところで、ワールドゲームズの翌年、2002年に日韓共催のFIFAワールドカップサッカーが開催されることを知らぬ人はいない。だが、別表にもあるとおり、他にも日本での開催が予定されている世界選手権、ワールドカップがあることをご存じだろうか? 世界一流のパフォーマンスが上陸し、それを目撃することで、これまでメジャーと言えなかった競技種目が一気にブレイクする可能性も十分ある。サッカーだけじゃない、多くの世界大会に足を運んでほしいものだ。
※フェア会場となりの市民グランドにおいて「ワールドゲームズウィーク'99」も同時開催
クローズアップナウ
*このコーナーではスポーツ・フォア・オールの精神がキラリと光る自治体を紹介しています。
スポーツ豊かさ度ランキングが全国1位の県
国体施設を有効に活用し、ソフト面も充実!
山梨県
山梨県教育委員会 スポーツ健康課 井上寛史
「全国総合1位は山梨県」。これは電通総研が発表した「都道府県別スポーツ豊かさ度」調査の結果である。
主要6項目の中で3項目(施設充足度、施設利用環境度、スポーツマーケティング度)で1位、ハード、ソフト面においてもトップの数値であった。しかしながら、この調査は都道府県別の地域の特性をわかりやすく概観するために行ったものであり、地域の優劣を指摘したり順位にとらわれたりするものではないので、一概に喜べるものではない。ただ、21世紀のスポーツ振興のあり方、または地域独特のスポーツ行政のあり方を模索していく上で、たいへん参考になった。
本県のハード面が高く評価されたのは、「小瀬スポーツ公園」の存在によるところが大きい。
昭和61年「かいじ国体」のメイン会場として設立されたこの公園は、国体後も県の「スポーツの拠点」として広く県民に開放され、多くの利用者に活用されてきた。近年においては、陸上競技場の改修工事(ナイター照明、電光掲示板、バックスタンドの設置)や武道館の設置などで、さらに整備が拡充してきたことが、施設充足度1位の評価につながったのだろう。
また、2001年の冬季国体とインターハイの会場となるスケート場が現在建設中である。全国でも少ないアイスアリーナは、県民の期待も大きく完成が待ち遠しい。
施設の利用者のニーズが多様化する中で、誰もが使いやすい施設が求められている。そのために、一人でも多くの利用者が楽しめるようなスポーツ振興事業(拠点サービス事業、巡回サービス事業、スポーツ啓発事業、調査研究事業、受託事業)を展開しているところである。
現在、多くの利用者から注目を集めているのが、SJF(スポーツ事業団フィットネスシステム)だ。生きる目的と喜びのために、体力や健康をよりよく取り入れる総合的なプログラムで、4コースが用意されている。スポーツドクター23名、管理栄養士13名、臨床検査技師2名のスタッフで、より医科学的なトレーニングができる指導体制をとっている。
このSJFの利用者数は平成9年度が16,624人、平成10年度が21,413人で、年間で約4,800人の増加がみられる。今年度も利用者数はさらに延びることが予想される。
21世紀のスポーツ施設は、多目的かつ複合的な機能が求められている。当県ではそれを先取りし、スポーツ施設が時にはコンサートや文化イベントを開催するための文化施設を兼ね、施設活用に幅を持たせるなど、新しい考え方に立って運営していることもソフト面の高評価につながったのではないだろうか。
公共施設の多くは「するスポーツ」に対する場所やプログラムの提供が中心であるが、今後は「みるスポーツ」としてのイベント誘致などを積極的に進め、メディアやマスコミヘの対応も円滑なものにして、スポーツ振興のより一層の活性化を図っていきたい。