日本財団 図書館


オオミズスマシは3個体しか確認されなかったことから、光ヶ谷でも一時的な利用者であったと考えられる。この調査地では3年間で52種が確認されたが、そのうち、長谷の池Aとの共通種は35種であった。池Aとの類似係数QSは、光ヶ谷1年目では0.56であったが、光ヶ谷3年目では0.71を示した(表4)。このことは、長谷の池Aでは光ヶ谷に造成した池よりも遷移が速く進行したことを意味すると考えられる。

長谷、光ヶ谷、森上、地黄を合わせると大阪府北部全体では74種の水生昆虫が確認されたことになる。どの調査地でも50種近くの水生昆虫が確認されたことから、各調査地周辺には豊富な水生昆虫群集が残されていたと考えられる。今回調査した長谷の全調査区と比較すると、光ヶ谷と38種、森上と41種、地黄と39種が共通しており、QSも0.72以上の高い値を示したことから、守山(1997)や上田(1998)が指摘するような水生昆虫の生息環境のネットワークの存在が示唆される。

 

5. 府大圃場の池の水生昆虫群集の特徴

 

府大圃場の池は都市部にあり、周囲に長谷の水路や湿地のような水生昆虫の供給源が乏しかった。コウチュウ目は種数・個体数ともに少なく、荒れ地などでも確認されるチビゲンゴロウ1種のみが定着したにすぎなかった。また、カメムシ目も、普通種であるケシカタビロアメンボ、イトアメンボ、コマツモムシの3種のみが継続して確認されたにとどまり、これらの寡占が目立った。トンボ目はシオカラトンボ、ウスバキトンボ、ショウジョウトンボなど都市環境でも生息できる種(長田、1995;上田、1998)が大半であり、長谷のように多様な水生昆虫は確認されなかった。しかし、山間部である長谷にはみられなかった平地性のアオモンイトトンボのような特有の種も数種確認された。さらに、この調査地は水生昆虫の移動・分散の中継点として利用されたとも考えられ、生息地間をつなぐネットワークを形成する上では重要だと考えられる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION