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種数については、長谷の池Aではため池の造成直後に密度と同様に急激に増加した。その後は、10月にピークを迎えるまで増加傾向を示した。これに対して、府大圃場の池では、ため池造成直後の急激な種数の増加はみられず、9月まで緩やかな種数の増加が続いた。また、現存種数も常に長谷の池Aの半分程度であった。

両調査地で優占していたコウチュウ目、カメムシ目、トンボ目の3目について季節消長をみると、トンボ目は両調査地ともに、種数、密度ともによく似た季節変化を示した(図7)。長谷の池Aでは、6月にシオカラトンボ類の増加により密度が急激に上昇した。その後、8月に一時密度の低下が見られたものの、9月上旬にギンヤンマ類、9月下旬にショウジョウトンボがそれぞれ増加し、再び密度は上昇した。一方、府大圃場の池では、9月まではウスバキトンボとシオカラトンボ類が群集の大半を占めていた。10月にはウスバキトンボが減少したが、それに変わってアオモンイトトンボとシオカラトンボ類が次々と増加することによって、トンボ目群集全体としては密度は増加した。

カメムシ目は長谷の池Aでは8月上旬まではコミズムシ類が群集の大半を占めていた。コミズムシ類が減少し始めると8月からマツモムシとミズカマキリが増加し、この2種の密度がピークを迎える9月から10月にかけてカメムシ目群集全体の密度もピークに達した。10月下旬からカメムシ目の密度はやや減少したが、11月25日の調査終了時までマツモムシやミズカマキリなどは継続して確認された。これに対して、府大圃場の池ではケシカタビロアメンボとイトアメンボが全期間を通じて優占していたため、11月にはカメムシ目の密度が大きく減少した。

コウチュウ目については、長谷の池Aでは6月に種数、密度ともに最低であった。その後、8月から9月にかけてシマゲンゴロウ、コシマゲンゴロウ、ガムシ、ヒメガムシSternolophus rufipes、コガシラミズムシPeltodytes intermedius、ヒメゲンゴロウの増加がみられ、コウチュウ目の密度が急激に増加した。これらのうち、シマゲンゴロウやヒメガムシなどがこのあとみられなくなったが、ヒメゲンゴロウの密度が高かったため、コウチュウ目群集全体の密度に大きな変化はみられなかった。これに対して、府大圃場の池ではコウチュウ目の成虫は5種確認されたが、常に見られたのはチビゲンゴロウ1種で、ハイイロゲンゴロウやカンムリセスジゲンゴロウなど他の種は1〜2回しか確認されなかったため長谷の池Aに比ベコウチュウ目は種数、密度ともに他の目よりも差異が顕著であった。

 

 

 

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