4. 種構成の類似度
Sφrensenの類似係数QSによる解析の結果を表4に示した。長谷の池Aと府大圃場の池では、0.41を示し、群集構造の類似度は低かった。長谷内の各調査区間では池Aと湿地の間で0.69と最も低い値を示した以外は、全体的に高い値を示した。
5. トンボ目成虫の種数と個体数
トンボ目成虫については、長谷ではイトトンボ科、モノサシトンボ科、アオイトトンボ科、オニヤンマ科、ヤンマ科、トンボ科の6科17種のべ411個体が確認された(表5)。このうちトンボ科が7種と最も多く、イトトンボ科とアオイトトンボ科がともに3種ずつで続いた。府大圃場ではイトトンボ科、アオイトトンボ科、ヤンマ科、トンボ科の4科8種117個体が確認された。府大圃場においてもトンボ科が5種と最も多く、残りの3科は1種ずつであった。共通種はアオイトトンボLestes sponsa、シオカラトンボ、アキアカネSympetrum frequens、マユタテアカネの4種であった。また、長谷のグンバイトンボPlatycnemis foliacea sasakii、アオイトトンボ、オオアオイトトンボLestes temporalis、アキアカネ、府大圃場のアオイトトンボ、アキアカネ、マユタテアカネ、チョウトンボRhyothemis fuliginosaは、成虫調査でのみ確認された。長谷で確認されたトンボ類の中には近畿地方では比較的生息地が限られているモートンイトトンボMortonagrion selenionも含まれていた。
各調査地の優占種は、長谷ではアキアカネ、シオカラトンボ、シオヤトンボ、オオシオカラトンボ、アオイトトンボで、この5種で全個体数の68.8%を占めた(表6)。また、府大圃場では、アオモンイトトンボ、シオカラトンボ、ウスバキトンボ、アオイトトンボ、ギンヤンマの5種で全体の96.5%を占めた。一方、長谷ではグンバイトンボ、オオアオイトトンボが、府大圃場ではアキアカネ、チョウトンボが1個体のみしか確認されなかった。府大圃場では、優占5種の占有率が長谷より20%近く高く、水中の昆虫と同様に、特定の種の寡占が目立つ群集構造であった。
6. 長谷の池Aと府大圃場の池における水生昆虫の季節消長
長谷の池Aと府大圃場の池の水生昆虫の季節消長を比較すると、密度については両調査地ともにため池造成直後から調査開始日までの間に急激に増加し、その後、10月をピークにして、11月にはわずかに減少した(図6)。