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これに対して、府大圃場の池では長谷のような造成直後の急激な種数の増加は見られず、造成後1ヶ月以上を経過した6月28日の調査でも、シオカラトンボ類、ウスバキトンボPantala flavescens、ユスリカsp.1のわずか3種しか確認されなかった(図4)。その後の種数の増加も約2種ずつと緩やかで、しかも8月以降、新たな種の移入は断続的になった。11月16日にアブTabanidae sp.2の侵入が認められ、最終的な累積種数は27種に達した。

池Aで最初に確認された大量の水生昆虫の移入は、主にコウチュウ目とカメムシ目によるもので、このうちヒメゲンゴロウRhantus pulverosusやミズカマキリなど9種は府大圃場では確認されなかった。また、共通種の移入のパターンを比べると、イネミズゾウムシLissorhoptrus oryzophilus、コマツモムシAnisops qenji、マルミズムシParaplea japonicaの3種のみが府大圃場では先行して出現したが、その他の13種は府大圃場の方が池Aより遅れて現れた。

池Bでは、5月22日にコシマゲンゴロウHydaticus qrammicusやマツモムシNotonect triguttataなど3目9種が確認され、6月1日にはヒメコガシラミズムシHaliplus ovalisやミズカマキリなど3目8種が新たに確認された(図5)。その後、調査ごとに新たに確認される種数は減少したが、9月28日にクロゲンゴロウCybister brevisの移入が認められ、最終的な累積種数は44種に達した。

池Bは、池Aと隣接するため、共通種は42種と多く、移入の時期にも大きな違いはみられなかった。池Aのみで確認された種はメミズムシやクロズマメゲンゴロウAgabus conspicuus、モートンイトトンボMortonagrion selenionなど9種、池Bのみで確認された種はクロゲンゴロウとユスリカsp.2の2種のみであったが、いずれも数個体ずつしか確認されなかったため、多くのものは一時的な滞在種と考えられた(表2)。唯一モノサシトンボCopera annulataは、池Aで9月28日に初めて確認され、その後もこの池でのみで低密度ながら確認され続けた。この種は落水のために池Bへの移入ができなかったものと考えられる。

 

3. 水中の昆虫の種と個体数

 

長谷の池Aでは、調査期間を通じてカゲロウ目、トンボ目、カワゲラ目、カメムシ目、アミメカゲロウ目、コウチュウ目、ハエ目の7目51種のべ19737個体が確認された(表2)。種数で優占していたのは、コウチュウ目(21種)、カメムシ目(14種)、トンボ目(9種)の3目であった。

 

 

 

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