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調査地および方法

 

1. 調査地

 

山間部の調査地は、大阪府豊能郡能勢町長谷(以下、長谷)にある棚田群の上部(標高約350m)に設定した(図1、表1)。1999年5月8日に放棄され湿地化している棚田の上部の一段に水路や畦を整備して、面積約50m2のため池(以下、池A)を造成した。池Aはつねに水を張った状態に保った。

また、市街地の緑地として堺市内の大阪府立大学農学部実験圃場(標高約30m、以下、府大圃場)を選び面積約30m2、深さ15〜10cmのため池を1999年5月19日に造成し、調査対象とした。この調査地では、水位が下がるたびに水道により水を供給した。また、実験圃場に隣接して実験農場があり、5月から10月まで水稲の栽培が行われた。

長谷においては、造成したため池に成立する水生昆虫群集を評価するために、一段上の湧水のために湿地化した放棄田に、面積約1m2、深さ15〜20cmの水たまりを3つ造り、それらとその周囲の湿地、池A造成時に同様に造成した面積約30m2のため池(以下、池B)、造成したため池周辺の水路4本(以下、水路A、B、C、D)についても調査を行った。水路の幅は、水路A、Bは約30cm、水路Cは約40cm、水路Dは約100cmであった。池Bは周囲の水田と同様に、1999年9月29日に水を落とし、湿田の環境を模した。

 

2. 調査方法

 

水生昆虫群集の調査は、原則として週1回、長谷では1999年5月22日から11月25日まで計26回、府大圃場では6月28日から12月6日まで計23回行った。調査には、直径約40cmのD型水生昆虫網を用い、ため池では畦の上から約1.5m以内を、また、ため池Aではこれに加えて中心部も1.5m幅で端から端まで、水路では2m毎に3mにわたって、また、湿地では全体を水面から水底まで、それぞれすくいとりを行った。すくいとった水生昆虫はその場で確認した後に、種名と個体数を記録し、放逐した。なお、種名のわからないものについては研究室に持ち帰り同定した。

本調査では、現地で識別が困難なシオカラトンボ類Orthetrum spp. (シオカラトンボOrthetrum albistylum speciosum、シオヤトンボOrthetrum japonicum japonicum、オオシオカラトンボOrthetrum triangulare melania)、ギンヤンマ類Anax spp. (クロスジギンヤンマAnax nigrofasciatus nigrofasciatus、ギンヤンマAnax parthenope julius)、アカネ類Sympetrum spp. (マユタテアカネSympetrum eroticum、ナツアカネSympetrum darwinianum)をそれぞれ1種とした。

 

 

 

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