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図12 北に向かって湾中央断面でみたエスチュアリー循環の模式図。陰影部は海峡部の混合水の進入路。

 

ところで、先の図8には、進入水深の季節変化を示した。この図は10年間の平均であるが、個々の年でみると、中層進入の始まる時期と終わる時期には、中層進入と底層進入が短い時間のあいだに何回か入れ替わることがある。このようなときには興味深い現象がおきる。

例として、中層進入から底層進入に替わるときの塩分と酸素濃度の縦断分布を示す(図13)。底に貧酸素水塊がある中層進入の状態から、底層にそって流入する状態に切り替わると、貧酸素水塊は湾奥に押し込められ、押し上げられ、中層に移動する。われわれは、このような貧酸素水塊を中層貧酸素水塊(Subsurface hypoxic water mass)と呼んでいる。

我々がADCPで断面流速調査を行っている最中に、このような底層進入がおきた(1994年10月29日)。このときの流量収支から求めた湧昇流速の鉛直分布を図14に示す。進入する底層水の上面では6m/日に達する大きな海水の上昇が起きていた。このような上昇流によって、貧酸素水塊の中に閉じこめられていた栄養塩も上に持ち上げらていると考えられる。

 

上層の高気圧性循環流と河川プルーム

エスチュアリー循環流は下層から流入し、湾内で湧昇し、上層から流出する流れである(図3)。

 

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図13 中層貧酸素水塊(下、%)とそのときの塩分分布(上)。観測日は1996年10月10日(中南部)と14日(北部)。

 

Ise Bay

1994/10/29 Section C

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図14 間欠的な底層進入が起こした鉛直流速、1996年10月29日。

 

 

 

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