研修生の研修報告
患者を全人的に見ることの大切さ
群馬県立がんセンター
薊 葉子
受講の動機
日本看護協会認定看護師教育課程ホスピスケアコース受講の一番の動機は、看護婦としての職歴を重ねていくにつれ、日々の業務への関心が薄れ、自分自身の将来への展望を見失っていたことでした。患者との関係、医師との関係、看護のあり方、終末期の患者のQOLなどに対して自分の行う看護はこれでいいのだろうかと疑問を感じていました。そしてこれらが複合して漠然とした将来への不安を感じていました。そんな中で看護婦としての業務を支障なく遂行してはいるものの、直面する問題に対しての解決策を見出す前に体制や慣習に対して諦めの感情を持ち、それを繰り返すうちに、仕事にやりがいを見出せなくなっていました。
日々の業務への関心の薄れは、まさに臨床で感じている一つ一つの問題解決に対する糸口を見出せず、行動しないで諦めていた点にあります。臨床では問題が見えていても解決に結びつけることができず、特に役職上の責任がない自分の立場からすれば「なす術がなく仕方がない」こととして見過ごしていました。その一方で、そのすべてが患者さんのために解決されるべき問題であるにもかかわらず、解決されずに放置されてしまうことに、仕事を続けていく上での大きなストレスを感じていました。ストレスが解消されないこと、それに対して自分が解決策をもっていないことが自分自身への不信感につながっていました。
見聞きしている終末期の患者の理想的なあり方と現状を比較し、落胆して諦めても何の解決にもなりません。高齢社会において死にゆく人は増え、医療の中でも人権を尊重した緩和医療は確実に重要性を帯びてきています。人権を尊重するということが現在の医療の中で欠けていること、現行の医療行為の中で人権を無視した行為は具体的に何であるのかを医療者が認識する必要性があると強く感じていました。
しかしながら、具体的に自分がどうすればいいのかはわかりませんでした。目標が見えているにもかかわらず方法がわからないことで、自分への不信感と他者への責任転嫁はますます強くなっていました。まさにバーンアウト寸前であったと思います。しかし、内省してみるとその原因の一端は自分の知識のなさにあるということに気づき、そんな時にホスピスケア認定看護師コースの存在を知り、受講に至りました。
実習の成果
聖隷三方原病院ホスピスは、ホスピスとしては1981年に日本で最初に建てられたホスピスです。1997年には建物を新築し、当初よりもさらに快適な環境が、患者そしてケアする家族やスタッフに提供されています。全室が個室でそのスペースは厚生省の定める基準の2.9倍であること、その上個室料がなく患者の経済的負担が最小限であり、理想的な住環境が整えられていました。ホスピス全体のイメージはほどよい彩光と色調によって暗いイメージはなく、随所に家族への配慮やプライバシーの保護のための工夫がされていました。
一般病院で働いていた私にとって、そこはまさに理想的な環境ではありましたが、同時に別世界と言わざるを得ませんでした。一般病院の大部屋であれば、個人が占有できるスペースはせいぜいベッド2台分くらいのもので、患者も家族も同室者に遠慮しながらその空間にいるといった例が大半だからです。