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例外的に1曲だけは、当初2票であったが、さらに二人の委員が票を加え、4票で続く選考のステップに残された。

次の段階に進んだ9曲について、今度は各委員が、第二次の演奏による選考(1999年7月2日)で、実演されることが可能な3曲という限度にしぼっての推薦をおこなうという形で、これも挙手によって、結果を出すことになり、また、この投票には、高田、三善両委員の積極的な評価も一票としてつけ加える形で得点が集計された。その結果、9曲中、6票と5票を得た2作品については、これを入選作品と決定したが、残る7作品の中で、3票を得た2曲について票決したところ、4票を得た作品があり、これをもう1曲の入選作品とした。

この第二段階の選考の折には、演奏による第2次選考の機会に生じうる問題点についても論議が戦わされたものであった。しかし、そうした問題点は、事務局との間で、具体的かつ積極的に解決を図ることで諒承された。

こうした形で、第21回作曲賞の第一次選考が終わり、以下の3作品の入選が決定された。これら入選作(No.13、No.14、No.21)は、すでに触れたように、本日平成11年7月2日(金)に、<なかのZEROホール>で開催される<現代日本のオーケストラ音楽>第23回演奏会で、小松一彦氏指揮の東京フィルハーモニー交響楽団の演奏で紹介される。この演奏は、作曲賞の第2次選考の対象となるもので、コンサート終了後に行われる第2次選考会で、3曲中から<作曲賞>の授与が決定される。

つづいて、以上3曲の入選作と、その作曲者について紹介を試みてみよう。

 

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神本真理氏(かみもとまり)は、昭和50年(1975年)11月生まれの23歳。現在東京芸術大学大学院音楽研究科修士課程作曲専攻2年生であるが、作曲を野田暉行、広瀬量平、故平吉穀州の各氏に師事し、1996年には東京国際室内楽作曲コンクールで第3位に入賞を果たしている。

オーケストラのための“舞”は、およそ10分の曲であるが、次のような<作曲の意図>の下に書かれている。

「西欧のバレエ、モダンダンス。日本の能舞。これらは文化やスタイルに違いはあるものの、言葉を用いずに感情表現する『舞』という点で共通している。一人の踊者が颯爽と舞台に登場し、この三つの『舞』を順に演じるうちに、舞台はデモーニッシュな空間に包まれていき、やがて一つの『舞』へと溶け合っていく…。この幻想のステージを音に映し出し、作品として書いた。」

この作品については、演奏上の問題として途中で掛け声が発せられる点に、若干の異議、批判の発言も委員の間から聴かれたが、曲自体は当初から評価が高かった。

 

高橋東悟氏(たかはしとうご)は、昭和36年(1961年)10月生まれの37歳。武蔵野音楽大学音楽学部作曲学科を卒業し、作曲については、田村徹、田辺恒弥、山崎正嗣、嶋津武仁の各氏に師事されている。入選、入賞歴については1996年に第65回日本音楽コンクール作曲部門(オーケストラ曲)に入選、翌1997年には第66回日本音楽コンクール作曲部門(室内楽曲)に第3位で入賞されている。

Recollection - for Orchestra は、約15分の作品で、以下のような注釈がつけられている。

「私は、弦楽器群の入ったものを作曲する場合、その響きの中にしばしば『海』を感じ、それを中心として創作する。別段、海の側で育ったわけでもなく、特定の印象深い風景があるわけでもない。しかし、何故か海を感じずにはいられない。

今回の曲『Recollection(回想)』は、自己成長の様々な過程で遭遇した場面(回想)を、客観的に振り返ってみたいが為に書いた。

 

 

 

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