ベートーヴェン(1770〜1827) Ludwig van Beethoven
交響曲 第6番 「田園」
〔作 曲 年〕1807〜08年
〔作品番号〕68
〔初 演〕1808年12月22日 アン・デア・ウィーン劇場
〔演奏時間〕約45分
偉大なベートーヴェンの作曲した、古典音楽の金字塔といわれる九つの交響曲は、それぞれに優れた、価値ある作品ばかりです。特にこの第6番の「田園」(バストラール)は第5番の「運命」にみられる、すさまじいばかりの人間の闘争とは、およそ対象的に自然を愛し、人間の生きる喜びを駆使した、人間ベートーヴェンの一面を描きだした名曲として知られています。
この曲はベートーヴェンの38才の時の作品で、ウィーンの北にあるハイリゲンシュタットの丘は、今でも「田園」を作曲した場所として保存され、見物に来る人達でにぎわっています。「田園」を作曲した当時は、交響曲に標題などはなく、抽象的な内容を音楽にした作品ばかりだっただけに、各楽章ごとに標題をつけたベートーヴェンのこの曲は、新しい一面を作り上げたもので、大変に珍しい形でした。楽章も、五つの楽章という型破りのものであり、ベートーヴェンの意欲が充分に伺える作品です。
第一楽章
「田舎に着いた時の愉快な気分」 アレグロ・マ・ノン・トロッポ(速く、ただし過ぎぬように)
初夏の田園の明るい陽ざしとそよ風を感じられるような平和と喜びに溢れる楽章
第二楽章
「小川のほとり」 アンダンテ・モルト・モッソ(ゆっくりと歩くような速さで感動をもって)
静かな優美な楽章で八分の十二拍子、流れる小川や後半にはナイチンゲールがフルートで、うずらをオーボエで、カッコー鳥がクラリネットで演奏されるのどかな田園風景が美しく描かれています。
第三楽章から第五楽章は続いて演奏されます。
第三楽章
「田舎の人との楽しい集い」 アレグロ(急速に)
村祭りに踊る農夫たちの愉快な場面を描いています。
第四楽章
「雷と嵐」アレグロ(急速に)
ピッコロ、トロンボーン、ティンパニーが加わり、踊りの場面が一転してにわかにすさまじい嵐となり、この嵐が静まると引続き第五楽章に入ります。
第五楽章
「牧歌、嵐のあとの喜びと感謝」アレグレット(やや速く)
羊飼いの笛のメロディから、のどかな優しい主題が繰り返し変奏され、大自然と人間があたかも、一つの場面に溶け込んでゆくような雄大な終結部へと導かれて行き、ホルンが序奏部のメロディを吹いて曲は終わります。
モーツァルト(1756〜1791) Wolfgang Amadeus Mozart
クラリネット協奏曲イ長調
〔作 曲 年〕1791年10月はじめ
〔作品番号〕K622
〔演奏時間〕約30分
この曲は、モーツアルト最後の協奏曲です。名手アントーン・シュタードラーのために作曲されたが、モーツアルトの生前に演奏されたかは定かではありません。
18世紀に登場した新興の楽器クラリネットは、モーツアルトとシュタードラーの協力のもとに個性を見いだされ、性格を確立された楽器といっても過言ではありません。他の管楽器と比べた時のクラリネットの特色は、広い音域をもち、高・中・低音域で音色がことなっており、人声にも匹敵するニュアンスの豊かさを有することにあります。
また、この協奏曲は、モーツアルトを甘く内面的な響きと、晩年を特徴づける澄みきった音調の不思議なまでの溶け合いを示しており、モーツアルトの作品を含めたあらゆる管楽器の協奏曲中の最高の作品となっています。そればかりか、全曲に官能性と精神性の一体となった高貴な表情をたたえたこの協奏曲は、もっともモーツアルト的な作品の一つということができるでしょう。
第一楽章 アレグロ
第二楽章 アダージョ
第三楽章 ロンド・アレグロ