3] 需要の伸び悩み、荷主ニーズの高度化への対応
トラック輸送の分野では、宅配便という新しいサービスの創出により巨大な新需要が創出された。内航海運においても新しい輸送システムの開発により新需要を創出し、輸送量の拡大と高収益性の達成を目指さなければならない。
国内貨物輸送の現状は、小口貨物はトラック、大量輸送貨物、特に重厚長大貨物や砂利など運賃負担力の小さい低付加価値貨物は内航という住みわけがなされている。そのため、輸送絶対量の減少に伴い大口貨物が小口化する減少が見られ、これが内航からトラックへのシフトを生じ、トラックの輸送シェアを高めている。しかし、トラックと内航を環境への負荷という点で比較すると内航の優位性は明らかであり、小口貨物輸送においても内航利用が望ましいと考えられる。そのためには、地球環境問題を国民全員が強く認識し、環境にやさしい輸送手段の活用促進の必要性についてコンセンサスを形成することが基本要件であろう。また、内航が輸送量を維持、拡大するためには小口貨物の新しい輸送システムの開発がぜひとも必要である。小口貨物の輸送に適した船型の高速貨物船と高効率の港湾荷役システム及びきめ細かい陸上配送システムを結合できれば、輸送所要時間や定時性の点で現在のトラック輸送と十分対抗できるであろう。輸送費用の点でも、「環境保全・少子化社会」ではトラック運送のコストは上昇すると予想されることから、内航の新システムはコスト面においても競争力はあると考えられる。
このような新しい内航輸送システムの実現のためには、高度な情報能力と海陸にわたる貨物の輸送、保管、荷さばき能力を有する事業者と全天候荷役岸壁や公共の荷さばき施設等の整備が必要となる。したがって、その輸送システム運営事業者はかなりの規模の経営資源(人材、船舶やトラックなどの機材、荷さばき施設、情報ネットワーク、資金力等)が必要であろう。このため、従来型の専業的な内航事業者よりも、総合力を有する新しい経営形態の事業者が輸送システムの運営にあたることが望ましい。