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3) 内航輸送需要の伸び悩みと高度化する荷主ニーズ

内航海運による輸送量(トンベース)は、平成6年度の556百万トンをピークに減少傾向となっており、平成9年度は541百万トンとなっている。トンキロベースではほぼ横ばいであるが、内航海運を取りまく状況を見ても、今後増加傾向に転じる要因は見当たらないのが現状である。

特に近年は国内物流量の伸び悩みにより、輸送機関の間での競争が激化しており、特にトラック運賃の引き下げが内航輸送からトラック輸送へのシフト(世に言う逆モーダルシフト)をもたらしている。荷主アンケートにおいても内航利用減少理由として「トラック運賃値下げによるトラックへのシフト」をあげる荷主が15%あった。

内航海運とトラックの輸送量及び国内輸送におけるシェアの伸び率を比較すると表4-3.のとおりであり、トラックのシェアは昭和60年から平成9年で13ポイント伸びたのに対し、内航のシェアは12ポイント減少している。

 

表4-3. 内航海運の輸送量とシェアの推移(トンキロ)

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(注) 昭和60年を100とする指数

 

さらに、鉄鋼、セメント、石油といった内航大宗品目の荷主業界において進められている企業合併や物流合理化の進展も、内航輸送需要の減少をもたらす一因になる。

さらに、JIT(ジャスト・イン・タイム)、輸送単位の小口化などの物流ニーズに対する内航海運の対応の遅れも「荷主の内航離れ」をもたらすと考えられる。

荷主における物流コスト削減ニーズは強まる一方であり、内航事業者に対しても入札制の導入、協定運賃の見直しなどが行われている。内航事業者側も輸送量の確保と船舶稼動の維持のため、荷主の要求する運賃で契約せざるを得なくなっており、収益性の低下は避けられない状況である。

 

 

 

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