船腹量が減少しつつある平成11年夏以降においても、事業者アンケートによれば運賃水準は低下の一途をたどっており、荷主においてもさらなる運賃の引き下げを望んでいる。したがって、船腹過剰の解消により運賃の適正化が進むという事業者の期待が達成できるかどうかについても不透明である。また、船腹需要がバランスしても、運賃、用船料が下がることとなれば本来の市場経済が確立されていないこととなり、公正な取引ができるよう取引環境の是正が必要である。
2) 事業収益性の低下とぜい弱な経営基盤
近畿の貸渡専業者の98%は資本金1億円未満であり、個人事業者も23%を占める。中小零細事業者のすべてが経営基盤の弱い事業者とはいえないが、内航総連の資料とアンケート結果から明らかなとおり、貸渡専業者においては資本の内部蓄積が極めて乏しく、そのため自己資本比率も低い。
船舶以外に見るべき資産を持たない内航海運事業者(特に貸渡専業者)は、これまで内航総連が行ってきた船腹調整事業に伴う引当資格を担保とし、事業者の体力に見合わないほどの高額な融資を金融機関から受けている。一方、景気低迷に伴う輸送量の減少は需給ギャップの拡大とそれに伴う運賃ダンピングをもたらし、事業者の収益性は低下している。借入金返済のためにキャッシュは減少し、資本を内部蓄積する余裕がなくなり、経営基盤はますます弱体化していく事業者が多くなっている。
内航海運事業者の経営基盤が弱体化した原因についてもう少し詳しく述べる。