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2. 内航海運の課題

これまでに取りまとめた現状分析に基づき、内航海運が競争力のある輸送手段としてその使命を果たすために解決すべき課題を表4-2.の5点に絞った。以下で各課題の内容を整理する。

 

表4-2. 内航海運が解決すべき課題

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1) 船腹過剰(需給ギャップ)

内航海運の過去30年間を振り返ると、船腹過剰の状況が多かった。昭和40年代後半の好景気には一時的に船腹需要がひっ迫したが、それ以外はほとんど船腹過剰であった。内航海運は、船舶の使用期間が15年程度と長期で、輸送サービスの貯蔵が不可能なうえに係船等による輸送力の調整も困難であるため供給量の調整がむずかしい。その一方で、需要量は景気変動等の影響を受けやすく変化が大きいため、そこに需給ギャップが生じる。需要量よりも供給量が大きくなると、限られた量の貨物を受注するために運賃競争が激化し低運賃による受注が生じ、事業者の収益性が低下する。そのため、運輸省は内航海運の適正船腹量を設定するとともに、それ以上船腹量が増加しないようにするためのスクラップ・アンド・ビルドを基本とする船腹調整対策を進めてきた。その結果、平成元年以降はかつてのような大幅な船腹過剰は解消された。さらに、内航海運暫定措置事業の導入により船腹量の減少が進展し、長期的には船腹量は運輸省の設定している適正船腹量とほぼ同じ水準になると予想される(図4-3.)。

内航海運暫定措置事業が導入されてから平成11年9月までに784隻、88万総トンの船腹量が減少したことにより、平成12年頃には貨物船において需要に見合う船腹量が不足するのではないかという意見もある。

このように、内航海運の課題であった過剰船腹量の解消が少なくとも貨物船については実現しそうであるが、油送船の需要は減少傾向となっており、油送船の需給ギャップが完全に解消するにはまだ時間を要すると思われる。

 

 

 

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