一部の内航海運事業者は、内航海運暫定措置事業に対する不満を国家賠償訴訟というかたちで示した。西日本12府県の83事業者が、「平成8年にはトン当たり15万円の価値があった船舶が、暫定措置事業では10.5万円に下落した。この差額分の1割を国は賠償すべきだ」と訴えた。暫定措置事業における交付金単価は公的な審議会において引当権の時価評価に基づいて定められたが、引当権の時価がもっとも低迷している時期での評価であったため引当権時価評価額が低くなり、事業者の不満感が強まったものと考えられる。
内航海運暫定措置事業の実施開始後1年間の動向を見ると、解撤等交付金申請量は当初の予想を大きく上回ったが、建造申請は当初予想を大きく下回っている。これは、内航海運の景況が想像以上に深刻であることを示すものであり、この打開策としては当面暫定事業による減船効果に期待するしかないように思われる。しかし、暫定措置事業はあくまで「暫定」であり、恒久的な内航海運対策ではないため、長期的展望に立った対策構築の必要性は依然として大きいといえる。